:: 7:額縁の裏
織が戻ると、会計のカウンター近くに二人はいた。
この本の森をあえて深追いしなかったようだ。正しい判断だが、執行官の外出は監視官の同伴、監視の元という厳しい条件があって可能になる。数分とはいえ、完全に目の届かない場所で好き勝手させるのは如何なものか。責任を取るのは常守なので、織の知ったことではないのだが。
お買い上げした本は狡噛が持とうとしてくれたため、お言葉に甘えることにした。使える筋肉は取り敢えず使うべきである。
再び車内で常守が思い出したかのように織に尋ねた。
「そういえば織くんって、嫌いな食べ物とかは?」
「ないよ」
「ないの?」
「見た目がよくて新鮮で衛生的で美味しければ」
「いちばんそれがハードル高いよ……」
「常守さんがいいと思ったなら、それが一番嬉しいし」
「うん、ありがとう」
常守にさらりと喜ばせるような言葉を紡ぐ織は、やはり純粋なのだと思った。隔離されたが故に、無垢。執行官は皆本当に変わった人間なのだとつくづく思った。
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常守の選んだ店はイタリアン。織は手始めにサラダを咀嚼していたのだが、狡噛に強引にピザを口に押し込まれていた。
「うまいぞ、食え」
「っ…! 無理矢理突っ込むなってば!」
「すまんすまん」
「狡噛さんはしゃいでる?」
「そう見えるか?」
「とっても」
まるで兄弟のような二人のやり取りを見て笑ってしまう。本当に仲が良い。知らないところで、心を許せるような信頼があるんだろう。
先程から感じる織の非難がましい視線はなかったことにしておく。
「なんで助けてくれないの?!」
「だって、すごく微笑ましいもの」
「監視官さりげなく酷いし、狡噛さんもありえない」
「どこがだ?」
「……あー、デザート美味しいね。常守さん」
「そ、そうだね」
やけに野獣的な目付きで凄まれた織は苦笑いして態とらしく話題を反らし、季節限定のプリンとジェラートをスプーンで抉る。
口の中でひろがるひんやりとした甘さに目を細め、二度とは味わえないだろうささやかな休日に感謝した。
/20130202
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