▼ また会う話
小学校5年の冬。はっきり覚えている。
最後のバレーの試合をした。
地方で行われた小さな大会。取るに足らないようなほんとうに小さな大会だった。
素人チームが目立つ大会をチームメイトと共に勝ち続けた。
俺はこの春に転校する。最後のお別れにチームメイトとこの小さな大会で試合をすることになった。
自分は膝が生まれつき弱く、決してスポーツに向いた体ではなかった。すぐに膝は痛みだして自分の邪魔をした。成長期が来たらどうなるかもわからない、いまにもバラバラになりそうな脆い体を抱えてバレーを続けていた。
でも、それも今日で終わり。この日の思い出を大事にしながら、バレーとお別れをする。
決勝まで勝ち上がった末に気付いた。名の知れた選手がいる。様子からして最後の思い出作りといったところか。
死ぬ物狂いでチームは勝利を収めた。多少無茶なトスも、チームメイトは必死に打ち抜いてくれた。自分の膝を庇いながら闘ってくれた。
その甲斐あって勝つことができた。なんであれ、勝ったことは嬉しい。
限界を迎えた膝も、自分も笑っていた。
仲間に支えてもらいながら、呆然と立っていた。そしてチームメイトに泣きつかれ、自分もぽろぽろ涙を流しながら、いとしい仲間とバレーにお別れをした。
――はず、だったのだが。
目の前にいる二人組の男達を、自分は知っている。
この県有数のバレー強豪校である中学に入学したのは、単に引っ越した先で一番近かったからに他ならない。この中学の実績はよく知っていたが、バレーとはほとんど縁を切っていた。試合は普通に見るし、自室でボールを弄るレベルのことはしているが。
「……きみ、ちょっといいかな」
有無を言わせぬ声色。強張った顔。
思わず後ずさりすれば、さらに距離を詰められる。
忘れるはずはない。今でも鮮明に思い出せる。
でも、あのとき何か恨みを買っただろうか。俺が何をしたというのか。
世間は狭くて侮れないということが身にしみた。
2016/08/14
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