| 花弁が溢れる吐息 |
指で優しく太刀川さんの髪をかき混ぜる。
遮光カーテンは夏のぎらつく日差しを遮っているし、エアコンは少し低めの温度で稼働中だ。部屋の真ん中に陣取っているソファは背の高い太刀川さんがはみ出ないようにとちょっと大きめのを選んだ。そんなソファで、なぜかおれは太刀川さんに膝枕をしているのだった。
今時のエアコンは賢い。広い部屋でなぜかくっついている男二人を検知して、涼しい風を送ってくれている。
今日はずいぶんと趣向を変えるなとぼんやり思いながら、楽しそうな太刀川さんの顔を覗き込んだ。まるで動物のようだった。ネコか、イヌか。いいや、オオカミか。
「楽しそうで何よりなんですけど、イマイチよくわかんないです」
「なにが?」
「いや、絶対寝心地よくないでしょう?」
おれは男なので女の子とは骨格が違うし、柔らかいふとももなどない。寝心地どころか居心地さえも悪そうである。
太刀川さんは大きな口を開けてひとしきり笑ってから、おれの頬を手の甲で撫ぜた。おれを下から見つめる瞳は、いつもより優しい気がする。
「周はわかんないかなあ。周を下から見上げるの、けっこう好きなんだぜ」
おれはぱちりとひとつ、瞬きをした。
◇
周の指は優しい。男にしては細いような気もするが、平均という概念とは縁遠いのでわからない。
いつもは見下ろしているけれど、見上げてみないと気付かない事だってある。
俺を優しく撫でる時の周はなぜか天使っぽく見えるとか。部屋のライトがいい感じになると特にそう見える。
いつもはまつげの方が先に目につくけど、見上げると綺麗な瞳の方がよく見えるとか。
あとは単純に、わがままに付き合ってくれる優しさとか。これは今回に限った話じゃないけれど。
2019/08/12
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