ハロー晴天


......グスッ


さて、どうしようかな......


誰もいない談話室で一頻り泣いた。
誰もいなくてよかった。
今の自分の顔を誰かに見られちゃさすがにまずい。
涙と鼻水でグッチャグチャの顔をローブの裾で擦る。
このまま談話室に留まっててもしょうがないし、
かといって今から授業を受けに行く気にもなれなかった。
近くにあったソファにボフッと座り込む。
私はハリーが言った言葉が頭の中をグルグル駆け回る。



"君は僕らを騙してたんだ"


"情報を流してたんだろ"


"信じてたのに......"



あの時すぐに言い返せなかった自分に腹が立つ。
大体、騙してたって何をどう騙してたって言うんだろう。
1年の頃からハリーたちは何かと
【名前を呼んではいけないあの人】の事件に巻き込まれていたけど、
私は全くと言っていいほど関わりがなかったはずだ。
それに、あの3人とは仲がいいほうだったけれど、
いつも一緒に行動はしていなかった。
だって、あの3人は仲が良すぎたし……
ずっと一緒にいるのは、私がしんどかったから。


それなのに、ハリーは騙されたって思った。


「......なんか、違和感。 」


なんですぐに私が敵だと思ったんだろうか。
いくらなんでも早とちり過ぎないか。
もしかして、誰かがハリーにデタラメを言ったんじゃないか。

「......ありえるなぁ...... 」

そう推測を立てると、頭ではもうそれが真実なんだと理解し始める。
確証もないけれど、きっとそうだ。

「(ローラあたりだろうなぁ......)はぁぁ......」


「随分と大きなため息ねぇ? 」


ゾッとした。
ゆっくり後ろを振り返ると、何故か一人でにっこりと
人が良さそう(意地悪そう)な顔で私に杖を向けてるローラがいた。
全く気づかなかった。いつもの取り巻きはいない。
彼女1人だけ戻ってきたようだ。私はサッと立ち上がった。

「......じ、授業中じゃ......」

「だって、リアーナがいないんだもの。
心配になって戻ってきちゃった? 」

そう言ってニヤニヤ笑うローラ。嘘だ。
ゆっくりと私の方に歩み寄ってくる。それに合わせて私も下がる。


「......っ!こ 、こないで!」
「やだぁ、ひどいわぁ......せっかく心配してきてやったのに。」
「そんなの、頼んでないわ!!」


トンッと背中が壁にぶつかる。
ローラはどんどん私との距離を詰めてきた。


「チッ、随分といきがってんじゃないの、ジャップ。
私ちゃんと見てたんだから、ハリーと話してたの。
泣いちゃったのよねぇ? 」
「は......? 」


杖を私の喉に突き刺して楽しそうに話す。
見てたのか、いつから?
どんどんローラの顔が狂気じみたものになってきた。


「可哀想にねぇ..... ハリーに味方してもらえなくって......」


憐れむような顔をしながら私の頬に手を添えた。


「まぁしょうがないわよ...... 」


少し顔を伏せたと思ったら、目線をグッと上げて、



「アンタはバカな裏切り者の娘なんだから!!!! 」

「......っ!!」


カッとして堪らずローラの頬を叩いた。
談話室に弾いた音が反射して響く。



しまった、と思った時にはもう後の祭りだった。



「......にすんのよ!!!! このサル女!!!! 」



いつもは余裕ぶっているローラが珍しく叫んでいる。
そこからはもう早かった。



「せっかく優しくしてあげたのに!!
だからバカは嫌いなのよ!!!! 」
「ちょ、ちょっとローラ、あんた様子が……」

「うるさい!!黙れ!! 」


そういって、ローラは杖を向けた。



「ステューピファイ!麻痺せよ 」
「…ップロテゴ!! 守れ 」


急に放たれた魔法に何とか防御魔法を唱える。
だけど怒り狂ったローラに自分の魔法が追いつかない。


「コンファンド!!!! 錯乱せよ」
「ぐっ......!!」


聞きなれない呪文に混乱する。
彼女は構わず私に攻撃呪文を続けた。


「レビコーパス!!! 」

フッと身体が浮いた。

「降ろして!!!! 」
「うるさい! ディセンド!! 」

勢いよく地面に叩きつけられた。頭がグラグラして、
口から何か出てきて、目の前が一瞬真っ白になって、意識が.........







ビリッと魔法にかけられた感覚でハッと目が覚める。
先ほどと同じ光景がまだそこにあった。
一瞬だけ気を失ってしまったようだ。


「立ちなさいよ......このクズ!! 」


もう興奮状態で口調も定まっていないローラ。
シャープな頬が真っ赤になっていた。
それが怒りによるものか、それとも、私が叩いたからなのか。

なんとか起き上がって杖を構える。ヒュッと息を吸った。


「はぁ!? 何笑ってんのよ!! 」


ただの息継ぎを笑い声と勘違いしてしまうほど、
彼女はもうまともじゃなかった。

「ねぇローラ!! あんたどうしたのよ! 絶対おかし……っ 」
「黙れって、言ってんのよ……ッ!!! 」

過呼吸かと思うほど呼吸が荒くなったローラは、
最後のトドメだと言うかのように大きく杖を振りかぶる。
同時に私も杖を向けた。



『エクスペリアームス!!!! 』



互いの呪文が弾けた。



突然目の前に太陽が現れたような、
白くて熱い暴風がぶわァッと吹き荒れる。
談話室中を吹き荒れる竜巻は私を巻き込み、
地面にたっていられなくなって、
身体は宙を舞った。ギュッと目をつぶって耳を塞ぐ。


「(なにこれ!? 怖い怖い怖い怖い!!!! )」


どんどん竜巻は激しくなっていく。
それに合わせて周りがどんどん明るくなってきた。
これは、談話室の明かりじゃない。


これは、、


真昼間の晴天のような......


......せ、晴天、?



ハッと目を開くと、目の前には真昼間の晴天が広がっていた。

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