救済


※ここから筆者の英語力の問題により、
英語を話している時は『』で表します。



「 Don't worry. We're not your enemy. (警戒するな。オレらはお前の敵じゃない。)」



・・・は?


突然聞こえてきた、理解できる言語。
この世界の人たちが話している言葉よりずっと聞きなれた言葉なのに、頭に入ってこない。
恐らく安心させるために発せられた言葉は逆に私の不安をさらに煽った。


『だから安心しろよ。 自分の今の状況は分かるか? 』
『ッ! 手を離してったら……!! 』
『おいおい、取り敢えず落ち着けって。
別にとって食おうって訳じゃねぇんだ。』
『嘘言わないで! 』
『嘘じゃねぇよ。』


一拍


『……じゃあ何が目的なの』
『目的も何も、おめぇがここで眠りこんでるからだろ?』
『………』
『家出か? 』
『家出……….』


家出だったらどれだけいいか。
そもそも、私にはこの世界に帰る家なんかない。
それに、元の世界にだって帰る家だってない。


『…….帰る家なんか…ない…… 』
『あ? 帰る家がない? 親はどうした? 』


そう言われて、なんて答えたらいいか分からず俯いた。

元の世界に帰ったって、私は捨てられた身だ。
行く先もなければ待ち人さえいない。

ぐるぐる考えていると思考回路が麻痺してくる。

私はもう抵抗するのをやめてしまおうかと思った。
この人たちは敵じゃないって言っているし、もしかしたら助けてくれるかもしれない。

もし、仮に悪い人だったとしても、もうどうなってもいいやと思い始めていた。

今日一日ろくにものを食べていないからか、
私はもうまともに考えることができなくなっていた。


『(……悪い人じゃなかったら……助けてくれるかもしれない……)』


期待と恐怖がごちゃ混ぜになって呼吸が苦しくなっていく。
私はちらと目の前の男二人に目を向けた。

すると、エッフェル塔男が突然私に向かって手を伸ばしてきた。


『……っ!! 』

な、殴られる……!?

咄嗟にぎゅっと目をつぶって身構えた……のだけれど、
いつまでたっても強い衝撃は来ない。
そっと目を開けると、ポンッと降ってきた優しい衝撃。
驚いて勢いよく頭をあげると、


『だからそんなに怯えんなって。 大丈夫だから。』


太陽みたいな、そんな笑顔があった。


いつも私がローラたちに向けられていた、意地悪な笑顔じゃなくて、
先生たちが向けてきた、壁のある表面上の愛想笑いでもなくて。

もう大丈夫だって、助けに来たから安心しろって笑顔だった。


『(なんか、久しぶり、この感じ )』


さっきまでの嫌な緊張感も、苦しい孤独感も、負の感覚が一気になくなっていく。

この人たちが、本当に私の敵じゃない証拠なんかどこにもない。
もしかしたら何も知らない魔女だって知ってて連れ去ろうとしているのかもしれない。
でも、この人が悪い人だなんて思えなかった。思いたくなかった。
ずっと耐えてた何かが一気に崩れ落ちる音がして、ポロポロと涙が溢れ出した。


『……、親……、わから……なくて……』


怖かったの、ここがどこかわからないの、助けて、って
全部伝えたいのに、声がつっかえて上手く発音できない。


『へ……へんなばけものっ……がっいて……っ』


それでも、なんとかして言葉を続ける。


『ッ……知らない人に……連れてっ……い、いかれそうなって……!! 』


もう顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだけど、


『ここがっ……どこなのかっ……っわがん"な"っ………ぐって……!!! 』


暗転


『OK、わかった。 もう喋んな。もう大丈夫だ。』



急に引っ張られる感覚。
大きくて暖かい腕が冷え切った身体を包みこんだ。
顔をあげると、この人たちは思った以上に優しい顔をしていたことに気づいた。
大きくて暖かい手が、絶えず頭を撫で続けてくれる。
ひどく安心して、堪えていた涙も声も、もう我慢できなかった。


『うっ……ぅえっ……うわぁぁああああああん!!!! 』


私は赤ん坊みたいに胸にしがみついて大声で泣いた。



***


マイクside


「おいマイク……」
「いやいや俺が泣かせたんじゃねぇよ!?
……だが、こりゃァ、シヴィだけじゃすまねぇかもなァ……」
「なんだと? 」


俺の腕の中で肩を震わせながら涙を流す女子リスナー。
いや、今はリスナーとかふざけてる場合じゃねぇな。
家も親もわからないたァどういうことだ?
記憶障害でも無さそうだが、ただの迷子でもなさそうだが……


「アー、親も家もわからないんだとよ。」
「捨て子か? 」
「その可能性もあるな。 知らない人にに連れていかれそうになったらしい。 」
「誘拐、か…… とりあえずは警察に相談だな。」


それもそうだ。
警察に行った方が、親の捜索とか色々してくれるだろう。
そう思って、俺はその趣旨を伝えた。


『立てるか? とりあえず"警察"に行こうぜ。 親の居場所がわかるかもしれねぇしな。』


だけど、


『……っ! 』


"警察"という言葉が出た途端、突然そいつが暴れ出した。


『お、おい…!どうしたんだよ!』

『いっ、いやだ!! 警察は嫌!! 』



ジタバタと逃げようとするそいつ。
だが困憊しきっているのか、全く力が入っていない。
それでも警察は嫌だと暴れまくっている。
その異様な拒否反応に俺もイレイザーも目を見張った。


『OK! 警察はいかねぇ! だから落ち着け! 』


そういうとすぐにまたぐったりと大人しくなった。


「おい、今度はなんだ」
「警察が嫌なんだと……」
「……合理的じゃねぇな」


おっさん2人が道端で頭抱えてるこの風景は、
思った以上にシュールだろう。


『うっ……う"ぇっ…げほっ』

『ほら、あんま泣くと咽せるぞ。』


俺の腕の中でまだ泣きが落ち着かない少女を撫でながらこれからどうするかを考えた。
この少女を無理やり警察に投げるわけにはいかない。
かといって俺らどちらかの家に連れていくわけにもいかなかった。
……さすがにおっさんの家はやべぇだろ。

そこで、俺らはとある人の元へ向かった。

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