親愛なるコズミックへ






 一方は生物の生き死にをその拳ひとつで左右できるほどの力を持っていて、もう一方は何度殺しても蘇る不死の身をもつ男であった。
 矛盾を示す矛と盾のような関係は、しかし対立することもなく、それより、攻撃性などからっきし無い、特別な想いをもって、二人は互いを包み込んでいた。
 煙草の煙を吹き掛けたり、まずい飲み物を押し付けたり、耳打ちするふりで大きな声を出したり、相手の指を逆方向に曲げてみたりと、俺には理解できない方法であったが、ふたりはそれを「愛」と言いあらわし、子供のように無邪気な顔をする。
 行動だけ見ればいっそ愛なんて無いような行いを、感じた気持ちそのままに「俺には理解できません」と言葉にすれば、一方は赤い目を細めて「そりゃ、お前にはわからないさ」と言い、もう一方は「ジェノスはもっといい人を見つけるだろうから、わからなくていいんだよ」と仰った。
 俺よりもっといい人なんていないだろうと詰め寄る不死身に対して先生は「おまえよりいい人なんていすぎて数えきれないくらいだ」と素っ気なく言い、けれど奴が項垂れるより先に「でも、おまえ以上のいい男はどこにもいないな」とふざけた口調で、のろけのような台詞を告げて、二人はまたおかしげに笑う。
 こういった戯れは常にふたりをうんと幼く見せて、ほほえましく思うことも、辟易することもあった。そしていつのときも俺は、目に映る愛の、ほとんどすべてを理解できていないのに、特別な愛を交わす二人がずっと、とても、良いもののように見えていた。
 俺は、愛しているなら、手を繋いだり、抱き締めたり、頬を寄せたりするものだと思っている。それとは違うことばかりする二人なのに、理解できないと否定的な感情さえ覚えているのに、二人を見ていると、そんなことはちっぽけに思えてしまうし、実際、ちっぽけなことなんだろう。
 とにかく二人は、俺の知らない方法で気持ちを通わせて、癒し合い、二人だけの笑い方を知っていた。そして俺は、俺の思うもの、知っているものと幾ら中身が違っていようとも、それだって一つの「愛」であることだけは理解できている。
 いつか俺の両親がそうであったように、二人はいつの時も、一緒にいるときが一ばんの幸せのように笑うのだ。




- 4 -

*前次#


戻る


ALICE+