時が経つのは早いもので、歳を重ねるに連れてどんどん体感速度が上がっている気がする。
私の考えを両親に了承してもらい、送り出されて始まった寮生活は最初こそ不便だったけれども、同室になった子の個性が「幸運」というもので、半径50mに幸運を引き寄せるというものすごくありがたい素敵な個性。今のところ私には学校での怪我もなく大きな不幸にはあわなかったのだ。
まあ、四六時中一緒にいる訳にはいかないので、帰省中に個性事故にあったりちょっとした不運で入院したりもしたが、無事に中学三年生に進級しました。
中学受験はギリギリの決断だったので、願書提出や受験勉強に追われて追われて、忙しかったなという事しか覚えていない。
やばい。
「ただいま〜!」
「光!おかえりなさい。」
うだる暑さの中、春休みぶりの帰省を果たした私は、笑顔の母に迎えられてそのまま玄関になだれ込んだ。
玄関のフローリングが少し冷たくて頬ずりしてしまう。
「ッチ、もう帰ってきてんのかよ。」
「あ、勝己ただいま〜!」
足音のする方を見やれば前会った時よりも凶悪面の勝己がいた。
会う度に舌打ちをされるので、もう傷ついたりはしないけれど、少し寂しさを感じる。
中学に上がってから寮の閉まる纏まった休みにしか帰省できないから、会う度に成長している勝己を見る度嬉しいと思うのだけれど、それと同じくらい私の知らない勝己も増えて寂しいとも思ってしまう。
まあ、全寮制に進んだのは自分の意思なんだけど。
十二年間隣で一緒に成長してきたから身体の半分が勝手に成長してるみたいで違和感がある。
そんな事を一人で考えていたら勝己はさっさと部屋に行ってしまった。
話したい事があったのに。
「光、今買い物行ってるけど帰ってきたらお父さんにも挨拶しな。」
「今日お父さんお家に居るの!?」
「光が帰ってくるから有給とったんだって。今アイス買いに行ってるよ。」
「うわ〜!お父さん!早く帰ってこないかな〜!!」
私は家族が大好きだ。お母さんも好きだが、お父さんっ子だ。お父さん似で気弱だったし勝己は手がかかる子供だったから必然的に私はお父さんに構ってもらっていた。お母さんも一緒にいて楽しいし優しいから好きだけど、お父さんは一緒にいて安心するしお母さんよりもっと優しいから大好きだ。
「はしゃぐ前に荷物整理しなね。」
「っ、はい。」
一人大はしゃぎして浮かれている私にお母さんから声がかかる。こういう時の声がガチ怒の勝己と似てるからちょっとヒヤッとする。
「……」
「……」
部屋に入れば勝己は勉強机に向かって座っていて、部屋の真ん中にあるカーテンが引かれていた。
何となく話しかけづらくてとりあえず荷物を開いて整理していく。
もうあの寮で夏を過ごすことは無いから不要な夏物は持って帰ってきた。
その代わりに必要な冬物を選定して入れ替えていく。
黙々と整理していくいればあっという間に終わった。もうこの荷物もって寮に戻れるぞ。よくやった私。
一人達成感を噛み締めていればふと勝己が気になった。
そういえば、私勝己と話したいことがあったんだ。
二人の空間を仕切るカーテンに手をかけたらなんという偶然。勝己も全く同じタイミングでカーテンに手をかけていたようで、私よりも少し早くカーテンを開けた。私の手は行き場をなくして空を切った。
「あっ、」
「あ?」
なんという不幸だ。
カーテンを開けるために重心をずらしたせいで体制を崩した。咄嗟になにか掴むものを!と思って手にしたのは勝己の腕。
一緒に床に倒れ込むかと思った。
「……、ごめん。」
「アホか。」
何も言い返せない。
後ろに雪崩込むかと思っていたら、掴んでいた腕とは逆の腕で私の体を支え直して引き寄せられた。
不慮の事故とは言え、勝己に抱きしめられるなんて何年ぶりだ。極度の怖がりになる個性にかかった時は一日だけ抱きしめて一緒に寝てくれた気がする。その後も落雷の音が鳴り続ける個性にかかった時とかも泣きじゃくってたら抱きしめてくれたっけ。
懐かしくて擦り寄ったら抱きしめる力が少し強くなった気がした。
その腕は私よりも筋肉がついていて、ちゃんと男の子なんだな。と少しドキッとした。
「ただいま〜。」
「あ!お父さんだ!!」
お父さんの帰宅の声が聞こえて勝己の腕の中からすり抜けて出迎えに行く。
あのタイミングでよかった。あれ以上抱きしめられてたら変な気を起こしそうだ。実の兄に。まじでやばい。
その後、お父さんひ近況報告をして一緒にクラシックを聞いたりしていたら晩御飯が出来た。
「光、勝己呼んできてくれる?」
「はーい!」
そんな感じで勝己も呼んで爆豪家揃って晩御飯を食べた。私は話したいことがいっぱいあって全然食べ終わらなかったんだけど、勝己は自分が食べ終わったらすぐ部屋に戻ってしまった。
まあ、私達受験生だもんね。
「ご馳走様〜!久しぶりのお母さんのご飯美味しかった!」
「そりゃ良かった。」
やっと食べ終わって、二、三言交わしてから私も部屋に行く。
勝己に話したいことがあるんだ。