勝己と別れて教室に向かう途中、何人か生徒とすれ違ってわかったけれど、猫耳に尻尾なんて全然浮かないくらい個性爆発している学校だ。
まあ、個性社会になってから全然珍しくないんだろうけど、私の通っていた中学では滅多にいなかったし、いても関わりなかったし。
まあ、変に気にしなくていいとわかって安心しました。
「っにゃ!」
「…悪い、よそ見してて。」
一人安堵して教室のドアの前で立ち止まっていたら男の子とぶつかってしまった。
紫の髪を逆立てている男の子。目の下には隈ができている。不眠症かな?
「こちらこそ、立ち止まっててごめんにゃさいにゃ。」
「…いや、C組?もしそうなら同じクラスだ。よろしく。」
「…!!C組にゃ!よろしくおにゃがいしますにゃ。」
「…っふ、こちらこそ。」
やっぱりちゃんと喋れてないせいか笑われている。差し伸べられた手を握り返せばいつもと違った感触に尻尾が逆立った。
手のひらを見ればピンク色の肉球が付いていて納得した。
一人でびっくりして納得している様子がこれまた面白かったらしい。男の子は口を抑えて笑い倒している。
「…そんにゃにぃ笑わにゃいで欲しいにゃ。」
「っ、いや、俺猫好きなんだ、それで可愛くてつい。」
「それにゃら仕方にゃいにゃ。」
猫好きからしたら今の私は相当可愛いのかもしれない。でも、そんなに笑う程か?
大分恥ずかしい。
「…悪い、笑いすぎた。俺、心操人使。猫好きなの本当だからよろしくな。」
「私爆豪光。猫好きにゃら許すけど、顔みて笑われると傷つくにゃ。」
ちゃんと自己紹介をしてちょっと嫌味を言ったらごめんな。と言って頭を撫でられた。
いくら猫好きでも、今会ったばかりの異性の頭を撫でるなんて、ちょっと軽率だと思う。私が双子の兄がいない女の子だったら今ので惚れてるぞ。
でも、心操くんは猫好きと言うだけあって撫で方がとても上手い。全然嫌じゃないし喉までなる。ゴロゴロゴロゴロ私の意思関係なく。
しかももっともっとって擦り寄っちゃう。やばい。
「…教室前でイチャつくなよ。」
「ごめんにゃさいにゃ。」
ちょうどいいタイミングで他の生徒が話しかけてくれたおかげで、心操くんが撫でるのをやめてくれた。
ほっと一息ついて教室に入り自分の席を確認すれば、心操くんの隣だった。なんという偶然。
「心操くん!隣、やったにゃ!」
「…そうだね。これからよろしく。」
三度目のよろしく。が何故かものすごく嬉しくて笑ってしまっていたら、心操くんにまた笑われた。
辛い。
その後クラスで自己紹介をし、入学式に参加するために体育館に行った。
勝己はA組だったのでちらっと見てみればもう入学式が始まるというのにA組の生徒は一人も来ていない。それどころか担任も。
集団エスケープなんて大胆すぎる。と思っていたら普通に入学式は始まるし。雄英高校自由すぎる。
入学式も終わりカリキュラムの説明や教科書配布も終わって、明日の時間割を知らされて今日は解散。
高校生活一日目が無事(?)終わり、ため息を一つ。今のところ今朝の個性事故くらいしか不運は起きなかったけれど、ここは名門私立。生徒数も多ければ優秀な個性が犇めいているだろう。そんな中で個性事故に巻き込まれたらもしかしたら…。なんて考えて頭が痛くなった。
「爆豪さん帰らないの?」
「…心操くん、」
声をかけられて耳が動いたのがわかった。
それを見て心操くんが少し口を弛めているのも。
当然だけど、共学だから男の子もいるわけで、少しだけ気を使ってしまうな。
「お兄ちゃんが連絡くれるから待ってるにゃ。」
「…そっか、じゃあ連絡来るまで俺も待ってるよ。」
「…え、にゃんでにゃ?」
もう少ししたらお昼時だ。他の生徒は皆教室を出ていったのでC組には私と心操くんの二人きり。突然のアオハルっぽいシチュエーションに心臓がうるさくなってきた。やばい。
「一人で待つの退屈だろ?俺、別に急ぎの予定無いし。」
「…ありがたいにゃ。」
「…猫好きだしね。」
そう言って心操くんはちょっと意地悪な笑みを見せた。
不覚にもときめいた。
「猫好きって言ったって、もうにゃでにゃいでにゃ。」
「さっきはごめんな。警戒してない猫見ると撫でる癖があるのかも。爆豪さん全然警戒してないから、つい。」
「…そうゆう事だったにゃ。私の事からかってるのかと思ったにゃ。」
心操くんが投げかける言葉に答えているだけなのに思いのほか会話が弾んで楽しい。
一見怖そうな顔してるのに、意外と優しい顔して笑うから仲良くなれた気がして聞かれてもないことも喋ってしまう。
「…私女子校出身だから、今朝頭をにゃでられた時ときめいちゃったにゃ。」
「女子校出身だったんだ。だから男子が通る度尻尾が反応してたんだね。」
「っえ、そんにゃにぃ動いてたにゃ?」
「うん、笑いこらえるの大変だった。」
「…にゃっ、そんにゃにぃ?」
「冗談。」
結構遊ばれてる気がする。
でも楽しいので気付けば勝己から連絡が来ていた。
ちょっと時間がたってしまっているので勝己怒ってそう。
「…お兄さんから連絡来た?」
「うん。ごめんにゃ付き合わせて…。にゃんか奢るにゃ!」
「いや、大丈夫。それより、先輩の棟分かる?」
「…いや、お兄ちゃんとは双子だから先輩じゃにゃいから大丈夫にゃ。」
そうか、兄と言えば一般的に歳上だから、心配してくれたんだ。心操くんは優しいな。
「…双子で雄英受かるなんて、すごいな。」
「頑張ったから、私もだけど、勝己はヒーロー科だからにゃ!」
思わず名前で呼んでしまって、説明をしようと心操くんを見た時、さっきまで一緒に笑っていたのに表情が一瞬で強ばっていた。
「…ヒーロー科。」
心操くんは一言そう言って帰ってしまった。
追いかけようと思い、席を立ったら携帯の着信音が流れた。
ディスプレイを見れば“勝己”と表示されていて、出た瞬間に「今どこに居んだクソ猫おぉ!」と罵倒された。
すぐに向かうと言って電話を切って廊下に出た時、心操くんはもう居なかった。
心操くんにヒーロー科の話は地雷だったのだろうか。
明日なんと謝れば許してもらえるか考えていれば勝己が凶悪な敵面で迎えに来てくれた。
明日から大丈夫だろうか、私の高校生活。
それに個性解除方法の“愛する者”って、どうゆう基準なんだ。