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――…そう、


冒頭の古き伝承より、今よりも四千年以上も前の昔、一人の青年【勇者ミトス】は、大樹が育む聖地カーラーンにおいて、長きに渡って続いた古代大戦――…カーラーン大戦を見事終結させることに成功したのだった。
そして大戦を終結させた勇者ミトスは、神と謳われる存在【女神マーテル】との間に契約を交わし、当時の戦乱の根源でもあった邪悪な闇…――ディザイアンをこの世界の大地から封印し、人々を長き苦しみの淵から救い出す。

まさに勇者ミトスは勇者の中の勇者と人々から称せられ、その名を後世(こうせい)に永遠と遺していくのであった。


――…そして、


時は流れて、四千年という歳月が過ぎ去った現代の世界。世界が、そして人々が忘れ去っていた邪悪な闇なる存在…――ディザイアン。
だがしかし、勇者ミトスと女神マーテルとの間に交わされた契約によって封印されていた筈の邪悪な闇は、少しずつその凶悪な力を蓄え、現代の世界に新たな脅威を撒(ま)き散らし始めていたのであった。

毎回ディザイアンによって苦しめられていく恐怖、そして搾取され続け、徐々に枯渇していこうとする“マナ”。
それに耐えきれなくなった大地は、海は、空は脆い音を立て、世界は未だかつてない程の災厄に見回れて、滅びの危機にまで瀕していた。

しかしそんな災厄に襲われていながらも、人々は絶望することなく、ただひたすら女神マーテルと天に祈り続けていた。
この危機から必ずや人々を救ってくれるであろう、女神マーテルの神託を受けし“聖なる者”の存在を。



――…一方で、



女神マーテルの神託を受けし宿命を背負った聖なる者は、神託の村【イセリア】にその身を寄せ、徐々に迫り来る“運命の時”がやって来るその日を待っていた。
一人の、……まだ顔にあどけなさを残した澄んだ蒼き双眸を宿した健気な少女。
今ここに、少女と少女を悲運の渦から救い出そうとする純粋な少年と、それを取り巻く者達の果てしない世界再生の旅が始まろうとしている。

しかし……、
人々は全く気付かない…――否、気付くことがないだろう。
表世界の運命の歯車と対になって動き出そうとしている【裏世界】の運命の歯車の存在を。