唯一のキスをくれてやる

組織での任務を終えて簡素な自宅に戻る。静かに玄関を開けると寝室にだけ明かりが灯っていた。

なまえはまだ起きてるみてぇだな。
帰ってきた時に待っていてくれるやつがいるのは悪くねぇ…そう思えるようになったのは、他でもないなまえのおかげだ。



「帰ったぞ」

寝室のドアを開けると、純白のワンピースに身を包んだなまえが、ベッドサイドに座って雑誌を読んでいた。


「ジンさん!おかえり!」

俺が戻ると、なまえはページを捲る手を止めて寄ってくる。


「あぁ」
「今日もお疲れ様」


ぎゅっ、と存在を確かめるかのように抱きしめられた。
その間、俺は大分下にある頭を引き寄せ髪を梳くように撫でる。

直接こいつに伝えることはしないが、穢れのねぇ真っ白ななまえに、今着ているワンピースはよく似合っていると思った。



「それ、どうした」
「新しく買ったんだよ!ジンさんこういうの好きかな?って思ったから…」
「ハッ、俺の好みをよくわかってるじゃねぇか」

…今すぐにでも汚してやりたくなる。



そう耳元で囁けばカッと紅く染まる頬。
なまえの、いつまでたっても初心な反応をするところは見ていて飽きねぇな。


「…汚されるより、染まりたいかなあ、ジンさんに」


恥ずかしがりながらも、しっかり俺の顔を見て言ってくる。

くそ…あんまり可愛いこと言ってんじゃねェぞ。
こいつはいつも、俺の理性のタガを簡単に外しやがる。



「私が全部ジンさんに染まったら、離さないでいてくれる…?」

そんなことを、震えた声で聞いてくるこいつが何を気にしてるのか知らねぇが、俺は離す気なんざねぇ。
俺は惚れた女を簡単に手離してやるほど出来た男じゃねぇからなァ。


その代わり、俺の戯言や嘘偽りに濁らされた唇でも受け入れろ。
その分、なまえだけは愛してやるよ。




「早く、俺だけに染まっちまえ…」


そう囁いて、シーツの海に純白の姫を沈めた。



2017/05/13 rewrite