「夜と昼の神々」


 神話は全て天界の話だと言うのは有名だから君も知ってるだろ。この土地を守る神様たちはみんな空にいるって、君は信じてる? 僕も確かな話かどうかは分からないんだけど、自分の力を見たら、もしかすればいるかもしれないって思ってしまうし、否定はしない。
 これは、僕たちの世界と地下の世界が分かれてなかった頃の話だ。
 天界、雲上星地とも言われる世界では神様たちが僕らの世界を動かしていると考えられている。
 その中でも一番有名なのが、夜と昼の神々のお話だ。
 夜を作り出すという「暗色の皇帝」は、夜の世界の玉座に座る神と言われている。彼は夜より黒いマントを羽織り、頭上には冷たい星の欠片と月の針金で作られた王冠が煌めいている。
 彼の対極には昼を見守る「光明の王子」がいる。王子は黄金色に輝くマントを着ていて、頭には暖かな星の欠片と雲の綿で作られた王冠をかぶっている。
 この二人の神様は兄弟だ。皇帝が兄、王子が弟で、二人とも規則正しい時間を作っている。
 昼を見守る王子は、太陽を引っ張ってくる。明るい昼は人も動物もみんな、それぞれの足で立つことができるから、王子はただ雲と遊ぶだけ。たまに悪戯をしてくる太陽が退屈しないように話し相手になるくらい。
 でも皇帝はそうはいかない。暗闇を作り出して、今度は生き物を眠らせなければならない。そして気まぐれな星々が目を覚ますから、彼らがあちこちへ行かないように見張っているんだ。光りたがらない星がいれば突ついて起こし、「月の乙女」が泣けば、綺麗な服を用意してなぐさめる。
 夜の昼の間で面倒ごとが起きると王子も兄を手伝った。
 それでも足りなかった。兄弟だけで全部出来ないこともあるから、二人はついに人々に助けを求めた。役に立ちたいと思った人々は、夜空を見つめ続けて、どこにどの星が、どのように光っているかを測って、皇帝に伝えた。太陽や昼間の月がどんなに踊っているかを記録して、王子にも伝えた。
 人々の働きに兄弟はたいそう喜んで、お礼に力を与えた。人々は二人の神様の仕事をより一生懸命に手伝った。彼らは暗闇の中でも小さな光だけで立っていられるから、些細な変化に気づくようになった。中には風の歌や、草木の囁きにも応えるものも現れた。
 それが、僕達シエロのご先祖さまという話だ。


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