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  想い合うようになってから数ヶ月のことだった。荀ケは、曹操からの便りの中で、華佗が故郷に帰ることを知った。華佗が帰るとなると、郭嘉の酔い覚ましの薬のことが気がかりだった。郭嘉はちょうど出征していて、華佗は明日にでも出立するらしかったので、華佗の室を訪ねることにした。
「これは、荀尚書令。いかがなされた。」
「華佗殿。急に申し訳ございません。明日帰られるとお聞きしたもので。郭奉孝が、華佗殿にお世話になっているそうですが。」
「ああ、そのことならば、別の者に引き継いでおるゆえ、心配ご無用。」
「そうでしたか。ありがとうございます。」
 華佗は薄い鬚を撫でてから、ほう、と腕を組んだ。
「郭軍祭酒は、貴殿には病のことを打ち明けたのだな。」
 荀ケは、華佗が何を言ったか少し遅れて理解した。今、病と言ったか。華佗は、郭嘉の酒癖のことを面白がって病と呼んでいるのだろうか。しかし、打ち明ける、など、大袈裟なことを言うだろうか。
「貴殿からも、出征は控えるように言っていただきたい。治るものも治らなくなる。」
 華佗はおそらく自分の知らない話をしている。荀ケは、病とはどういうことかと問うてみることが恐ろしかった。華佗の言葉に、承知しました、と頷くことしかできなかった。次に郭嘉に会ったならば、話を聞いてみようと思った。そうして、病などあるわけないと笑われたいと、心から願った。
 最後に軽く挨拶を交わし、華佗の室を後にした。郭嘉と次会うのはいつになるだろうと、そんなことばかり考えていた。華佗の言葉は、なるべく考えないようにした。ただ、郭嘉の犬歯を見せて笑う顔だけを思い浮かべた。