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郭嘉が出征から帰ってきた数日後、二人の予定が合った日に、荀ケは郭嘉を訪ねた。毎回のごとく、執務を終えてからの逢瀬なので、日がすっかり落ち、二人も余計に気分が高まりやすいことは、仕方のないことだった。会ったらすぐに華佗と話したことについて聞こうとは思っていたが、いざ会ってしまうと、雰囲気に流されて、なんとなく言い出しにくくなってしまう。それでも、荀ケはずっとそのことを考えていた。
二人で寝台に横たわると、郭嘉は、
「今夜は眠らなくても良いですか。」
と荀ケの耳元で囁いた。その後に、
「これから忙しくなるし、ひと月もすればまた出征に行かなければならないから。」
と付け足して言った。荀ケは、恐る恐る病のことを聞いた。今言うべきことではないかもしれないと思いつつ、それでも、出征に行くと言われれば、聞かずにはいられなかった。
「それは華佗殿のご冗談でしょうな。」
郭嘉は笑って言ってくれた。郭嘉がそう言ってくれさえすれば安心できると思っていたが、意外とそうではなかった。彼が嘘を言っているように思えたのだ。それでも、郭嘉の言葉を信じようと思って、郭嘉に問うたのだ。ならば、今は信じるしかあるまい。それに、自分が知っている郭嘉は病などとは無縁であるかのように元気ではないか。心配することなど、何も無いはずであろう。華佗はやはり、酒癖の悪さを気にかけていただけなのだろう。きっとそうだ、と自分に言い聞かせた。
「そう言えば、長文が喜んでいましたよ。あなたの酒癖が治りつつあると。」
実際、郭嘉は最近、ほとんど酒を飲まなかった。宴などでは楽しそうに飲んでいるようだが。陳羣が褒めるほどには、酒の飲み方を改めているのだろう。陳羣が郭嘉を良く言うことは、たいへん珍しかったが、郭嘉は興味なさそうに、ふうん、と言った。
「華佗殿と長文殿の話はもう終わりにしましょう。」
郭嘉は、荀ケの頭に手を回し、髪を撫でる。催促しているのだ。荀ケは小さく詫びてから、郭嘉の前髪をかきあげ、額に口付けた。