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少し前からこの家に来るようになった人、バーボン。
金髪に小麦色の肌、まるで王子様のように整った見た目。おモテになるんだろうなあ、というのが第一印象。
無事ジン命じられた任務を終え伸びをする。社内にある大量の防犯カメラ映像を改編しバーボンの姿をなかったことにする。誰もいない映像を延々と流すだけでもいいが少し凝って誰もいないのに何かを必死に追いかける石嶋、という映像を作り上げた。その後緑葉製薬のシステムに入り込んだ形跡も消し、セキュリティも元に戻しておいた。これで追跡はほぼ不可能だろう。
「疲れたなあー。」
思わず口をついて出てしまった。クラッキングは得意だけど長時間集中していれば疲れるのは当然だ。
キッチンに行きメープルシロップを口に含む。メープル独特の匂いとどろっとした食感が口いっぱいに広がる。
「…。」
昔使用人が焼いてくれたスコーンにメープルをたくさんかけて食べる朝食が好きだったことを思い出した。自分ではコーヒーを淹れることくらいしかしないがまた食べたいな。
「さて、帰ってくるバボにおいしーいエスプレッソでも淹れてあげるか!」
大きめの独り言を言ってから作業に取り掛かる。ジンにはあとで報告しよう。