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今回も外見をバーボンに寄せて変装をする。安室名前だ。
ベルモットが買ってきたスニーカーを履いてそろっと玄関のドアを開ける。しっかりと辺りを警戒し、こちらを見ている人物がいないか確認してから外に出る。
今までは一人で外出することなどほとんどなかったがバーボンが安室透として喫茶店店員をしていると知り行ってみたくなったのだ。
歩き出して数十分、早くも体力の限界が訪れたようだ。公園が目に入ったので一休みしようと棒のようになった足を無理やり前へ押し進める。
目の前がだんだん暗くなってきた、道の端で膝を抱え蹲る。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
子供特有の澄んだソプラノボイスが遠くなった耳に届く。
「どうしたんですか?」
「なんだなんだ?」
続々と子供が近くに寄って来た。あれ、その人…とどこかで聞いたことのある声を最後に意識を手放した。次に目を覚ますと茶髪の女の子が私のことを覗きこんでいた。
「気が付いた?あなた脱水と貧血で倒れたのよ。」
ベッドに寝かされた重い体を起こし現状把握に努める。私を囲んでいる人間は女児二人、男児三人の計五人。その内一人は見覚えがあった。
「…ありがとう、助かった。」
「お姉ちゃん、元気になった?」
蹲っている所を見つけてくれた少女だ。名を歩美と言うと教えてくれた。
「どこかに行く途中だったんですか?」
言葉遣いが丁寧な男の子、光彦くん。
「腹減ってんのか?」
タイ焼きを貪る大きな子、元太くん。
私の状態を診てくれた大人びた女の子、哀ちゃんそして一度会ったことのあるコナンくん。みんな自己紹介をしてくれた、いい子たちだ。
「ねぇ、ポアロって知ってる?」
彼女達は知ってるよー、喫茶店だよね、スパゲッティ食いてぇななどと口々に言う。
「まさかポアロに行こうとしたの?」
と驚いた様子のコナンくん。そんなにまずかっただろうか。
「あそこからポアロまで歩くのは難しいんじゃない?」
哀ちゃんが呆れたようにこちらを見た。居た堪れなくなりとりあえず謝った。
「何で謝るんですか?名前さんは土地勘がないようですし、博士に送ってもらいましょうよ!」
「賛成!俺も腹減ってきたところだし。」
「えー、今タイ焼き食べてたのにー。」
行く気満々な少年少女達に気押されながら近くにいたコナンくんに声を掛ける。
「いいの?」
「大丈夫だよ。あいつらも久しぶりに行きたいみたいだし。」
ニカッと上がった口角に白い歯がまぶしい。将来は絶対イケメン確定だ。
「じゃあお願いしたいです。」