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「差し出がましいようですが、彼女は降谷さんを心配しておられます。」
「わかっている。」
随分と人間らしくなったものだ、怒って部屋に籠るなどするようになったなんて。そんな彼女になんと声を掛けたらいいかわからなかった。何をしてきたか、なんて簡単に話せるようなものではない。僕の協力者だ、彼女を信用していないわけではない。それにこれから名前にはやってもらわなければいけないことがたくさんある。頭では分かっているのになぜか巻き込みたくないと思ってしまっている自分がいた。咄嗟に突き放してしまったのだ。
「俺も随分弱くなったものだな。」
「そんなことありませんよ。守りたいものがある人間は強くなれます。」
「言うようになったな。とにかく今が正念場かもしれない。」
先程得た情報によると組織内は今騒乱状態にある、叩くなら今だ。長年追ってきた組織にやっと手が届く。
「これから組織の任務に集中する、こちらには帰れないから名前を頼んだ。」
「わかりました。御武運を。」