お嬢と妄想

赤井さんは上から下まで真っ黒、無地のツーピーススーツでかっちりきめている。ネクタイは基本的にしないので開けた胸元から見える紋々が扇情的だ。

組随一の強面に黒いスーツは似合いすぎて他の人が霞んでしまう位。

そして赤井さんはとても頭が良い、しかし組の中では結構な武力行使派だ。抗争などでスーツがお釈迦になると必ず同じスーツを買ってくる。

きっと違うものも似合うだろうからたまには違うものも着てみたらと提案してみたが、「これが気に入っているんだ。俺は元来一途なんでね。」と断られてしまった。


一方、零はグレーの生地に白いチョークストライプのスリーピース。整った顔立ちに爽やかな色合いが落ち着いた紳士的な印象を与えている。

基本的にはジャケットは脱がないが、有事の際はベスト姿を拝むことが出来る。実はそれがとてもとても格好良くて、身の危険が迫っていても思わず見惚れてしまう。

赤井さんの似合いすぎるスーツ姿に見慣れているはずなのに。あれはもはや凶器だ。
センターベントから覗く引きしまったお尻もなんともエロティックで…。


「何を考えているんですか?」

仕事の話をしているときはあまり言い合いにならない彼らの姿を縁側から観察しているといつの間にか零が横に座っていた。

「へ?いや。何でも?」
「嘘ですね。お嬢は嘘をつくとき一瞬眉が上がるんです」
「何それ!初めて聞いたんだけど」
「今考えた嘘なので」

いつから零はこんなにいじわるになってしまったのか。私はこんなにも心の中で彼を褒めちぎっているというのに…。

「はぁ」
「え、なんですか。なんでため息なんですか。お嬢、ちょっとま、待って下さい〜!!」


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