ストロベリー

あの夜から名前は俺や釘崎に頼るようになり、虎杖の部屋には行っていないようだった。
そして今日のように釘崎がいない夜は俺の部屋に来るようになった。

「恵ー、私もそれ食べたい」
「自分で作れ」
「ここで生ごみを生成しますがよろしいですか?」

自室で夕食の支度をしているといつものように名前が部屋に入って来て間の抜けた声で要求を言いながら肩に顎を乗せてきた。
以前からパーソナルスペースの狭い奴だったが俺にそういったことはしてこなかったので平静を装いながらも少し困惑している。

虎杖の代わりにしろ、頼れ、という言葉の通りになっているのは喜ばしいが無防備すぎないか? 虎杖はよく普通でいられたな。

「食え」
「わーいありがとう」

元より二人前作っていたのだ。簡単なものしか作ることはできないが名前はそれを嬉しそうに食べるのでやぶさかではない。

疑いようのない善人、とまではいかないが名前も呪術師には珍しく心の綺麗な人間だと思う。付き合いはそれほど長くないが名前の悲しむ顔は見たくない、出来ることならずっと幸せに生きて欲しいと思う。

何口目かを口に運んだとき、突然電池が切れたように名前の動きが止まった。また虎杖のことを思い出しているのだろうと簡単に推察できた。
ふいに見せるその表情は幾度となく俺の胸を締め付けた。

「明日…釘崎も誘って何か食いに行こう」
「乗った!」

ぱっと満面に喜色を湛えた名前は以前と同じ笑顔だ。どうかこのまま彼女が苦しさから逃れられますように。そう願わずにはいられなかった。



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