「終わったー」
毎日、毎時間聞いている鐘の音も今回ばかりはありがたみが桁違いだ。
鳴り終わると同時に安堵と喜びの声が其処彼処から聞こえてくる。名前もその内の一人だ。
テスト期間全日程終了。学生の醍醐味、晴れて夏休みである。
「名前ー!帰りマック寄ってこうぜー」
「いいねぇ。祝杯だー!」
イエーイと大きさの異なる手を重ね、上昇した気分を体現した。力の強い悠仁の打撃を食らいひりひりと痛んだがそれも嬉しく思えた。
片付けをしながら担任の話を聞き終わると同時に二人は教室を飛び出した。一刻も早く学校から出たい、この場所が嫌いなわけではないが次の予定が楽しみでしかたなかったのだ。
最後の科目の答え合わせをしながら肩を並べてファストフード店へと向かっているとあるお店が名前の目に入った。
「悠仁、ちょっとコンビニ寄ってもいい?」
「いいよ、何買うの?」
「くじ!一回だけ!」
コンビニエンスストアで不定期に開催されるキャラクターのくじが名前の目当てだった。
ちょっと待ってて、と言い残し足早に店内に掛け込んだ名前は数分後、トボトボと重い足取りで悠仁の前に戻ってきた。
「だめだった…」
どんよりと落ち込んだ様子の名前が引いたものは求めていたものではなかったらしい。
「仕方ない、私は引きがいつも悪い…」
先程までのくびきを逃れた感はどこへやら、仕方ないと言いつつも落ち込んだ様子が拭えない名前に悠仁は頬を掻き眉を下げた後、ぱっと何かを思いついたように名前の手を引き店内へ足を踏み入れた。
「名前はどれが欲しいの?」
未だ落ち込んだままの名前がPOPを指差すと悠仁はおもむろにレジでくじを引き始めた。
私ももう一回引こうかな、でも夏休みの予定もあるしバイト出来ないからお金もない…
POPを眺めながら悶々と頭を悩ませている間に悠仁は景品を店員から受け取り二人は店外へ出た。
「ほい」
「悠仁…!」
悠仁は至極当たり前のように名前の望むものを引き当て手渡した。
名前はもはや欲しいものが手に入ったことよりも悠仁の男前な振る舞いに眩暈がするほど感動した。
それにより目頭が熱くなるのを感じた名前は慌てて いいーっと自分の頬をつまみ溢れ出る感情を押し殺そうとした。
幼馴染の奇行にどうした? と声を掛ける悠仁に何度も謝意を述べ留まることを知らない感情達を素直にぶつけた。
「悠仁ありがとうー!!さすがすぎるよ!!」
「名前が元気になってよかった」
裏も下心もないその笑みに心臓をわし掴まれた思いだった。
自画自賛をしない、過度な感謝を求めない。そしてさらっとこういうことが言える。
悠仁は本当に出来た人間だ、名前は心の中でそういうところが好きなんだと何度目かもわからない告白をした。
「さーメシ食いに行こうぜー!」
悠仁は片手を高く上げ大股で歩き出した。薄紅に染まった頬を隠しながら。