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「さて敏腕マネージャー。今年の一年、どう見る?」

烏野高校男子バレー部の使用する体育館では一年の実力を見るための三対三が行われている。一試合目は三年生が加わり先程終えたところだ。

メンバー変えをして二試合目は山口、日向、縁下vs飛雄、月島、成田。
部活が始まる前に何か揉めたらしい月島くんと飛雄はプレーも性格も合わないようだ。
山口くんはいい意味でも悪い意味でも普通。一年生の中で一番気になったのは…

「日向は素人に毛が生えた程度ですね。特にレシーブは全く駄目」
「そう言ってやるなよ、お前からしたら大地さんとノヤっさん以外みんなヘタだろ」
「……」
「そこは否定しよう?分かってるけど悲しいから!」

大袈裟に悲しみを主張する田中は無視した。私につっこみ力は無い。
視界の端で口角を上げている菅原さんに嫌な予感がしてその場を去ろうとしたけれどがっちりと肩を掴まれそれは叶わなかった。

「そんな名前に役割を与えよう。西谷が戻ってくるまで日向のレシーブ練に付き合うこと!」
「どんな私!?いやです!」
「じゃあ副主将命令だっ!」
「そんなぁ…」

後輩の指導なんて向いてないし、プレーしたくない。なんてわがままが通るはずもなく…。



△△



「日向!腕だけで返そうとしない!もっと膝も使って。ちゃんとボールを正面に捉えて」
「すっすいません!」

一年生が本格的に練習に参加するようになって早二週間。各自実力確認試合で見つかった弱点の克服に勤しんでいた。

私といえば正直気乗りしなかったものの副主将スガさんの理不尽な命を仕方なく受け、彼らの中で一番ヘタな日向翔陽の指導にあたっていた。

こんなにも熱心に自分の得たものを教えるのは日向の勝利への渇望を日々目にすることで彼の熱にあてられてしまったからかもしれない。


「そういえば名前さんって影山と全然似てないですね」

俺は妹とそっくりってよく言われます。 と言いながら日向はへっぽこオーバーを返してきた。

先日田中も言っていたが、私と飛雄の容姿はあまり似ていない。強いて言うなら直毛の黒髪くらいか。ちなみに認めたくないが性格は少し似ていると言われたことがある。

「よく言われるよ」
「でも名前さんのオーバーは影山に似てます」
「…飛雄が私に似てるのっ」

地味に嫌な所を突いてくるな、この子。

「うわっ!いたっ!」
「はいはい、無駄口叩かなーい」

これ以上その話を掘り下げられないよう先程より強めの返しをした。ごめん、日向。でも話しながら練習しても意味がないよ。


「みんなー!練習試合決まったよ!」

息を切らしながら練習中の体育館に入ってきたのは顧問の武田先生だ。バレー未経験者ながらも我が部のために日夜奔走してくれている。

「僕が顧問になってからもうすぐ二年。やっと、やっと…実現しました」
「武田先生!どことですか?」

喜びに浸っている先生に早く言えとせっついた。
何か企んでいるような不気味な表情に部員皆で生唾を飲み込み先生の回答を待つ。先生は十分にもったいぶってからゆっくりと発言した。

「…東京、音駒高校です」
「ネコマってあの音駒ですか?!」

一年生はいまいちぴんと来ていないようだったけれど先輩と先生がこんなに喜んでいるなら、と一緒になってはしゃいでいた。詳しいことは澤村さんが教えてあげるだろう。

「我が校バレー部因縁の相手です。これからは頻繁にやっていただけるようです。遠いところわざわざ来てくださいますので、最高のプレーでお出迎えしてあげましょう」
「はいっ!」




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