08

世界が終わったその後は

あけましておめでとう!

疎らにそう聞こえるのが、より年を越したんだと実感できる。去年は最後の辺りに色々ハプニングがあったけど、それでも良い一年だった。
今年もどうか皆が安心して暮らせますように、とまた手を合わせる。

「じゃあ、初日の出までどうする?」

雷蔵のその提案に勘ちゃんが誰かの家に行こうと言い出す。一番近いのはハチくんだけど、彼の家は今とんでもなく汚いらしい。
じゃあどうする?と口を開いた勘ちゃんに続いてハチくんが唐突に提案した。

「翠の家に行きたい!」
「え?私の?」

飲んでいたココアが危うく気管に入るところだった。私の家、何も無いよ?と返そうとした時だ。

「翠の家はだめ。」
「私の家で良いだろう。」

突然両隣りの幼馴染みが冷めたい口調で言い始めるから、私を除いた三人も驚いている。こんなことは初めてだ。
初めて、と言うか私は幼馴染みの二人以外の男の子を家に入れたことが無かった。そう言えば、何でだっけ?

「えー、なんで?おれも翠の家行きたーい。」
「そう言えば、俺も行ったこと無いな。」
「もう一年の付き合いなのに、翠の家だけまだ行ったことねぇんだぜ?」
「あ、うん……。えっと、三郎の家じゃだめ、かな?私の家今散らかってるし…」

どうするべきかと考えたが、幼馴染みの言葉を無下には出来ない。適当な嘘でその場は乗り切り、そのまま三郎の家へ行くことになった。

「雷蔵、さっきどうしたの?」
「……聞きたい?」
「う、うん。差し支え無ければ…。」
「翠の家は、三人で行きたいから。」

ふわりとはにかんで、秘密だよ、と囁く雷蔵に、私は顔を赤くしてしまった。恥ずかしいけど、嬉しい。二人の輪に私も入れてくれているのだ。

「今年も御節作ったの?」
「うん。食べに来る…?」
「勿論。三郎なんか結構前から食べたいって言ってたよ。」

え?と反射的に前を歩く三郎の背中を見てしまった。勘ちゃんとじゃれあっている二人を見て不思議な感情が湧き上がる。
微笑ましいような、切ないような、

嬉しいなぁ、と呟いた私は果たして嬉しそうな表情だったのだろうか。




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