07

明日世界が滅びるならば

「うん、そうだね……。それがどうかしたの?」

知らないふりをした。私は何も知らない。

「………ううん。何でもないよ。仲が良いな、って思っただけ。」
「勘ちゃんも仲が良いよね……?」
「うん。そうだね。翠とも仲良しだよー!」

ぎゅっと抱き付いて来る勘ちゃんに私は誤魔化す様に笑った。きっと、気のせいだ。あの発言に深い意味は無い。……その筈だ。

「何してるんだ。」

ぎゅうぎゅうと抱き合っていれば、幼馴染の三郎が眉を寄せてやってきた。何で不機嫌なんだろう、と私は少し焦ってしまう。

「三郎、どうしたの…?」
「翠も……頼むからもう少し危機感を持ってくれ。」

えっ?と首を傾げていれば、次は勘ちゃんが三郎に抱き付いた。嫉妬か〜と、笑う勘ちゃんと嫌がる三郎は、何処からどう見ても仲の良い友人だ。
でも、今の私は何故か心臓がドキドキと暴れている。

なに、何で……?

「何食べてるんだ?」
「えっ?あ、これはおしるこ。美味しいよ。三郎も貰ってきたら?」

勧めると、そうだな、と返事をした彼。三郎は行ってしまったから勘ちゃんはまた隣に座った。
この沈黙が怖い。

「三郎ってさ………、」
「うん?どうしたの?」

「雷蔵のこと好きなのかな。」

例えるならば硝子という脆く繊細なものを、金槌で殴った時の音が聞こえたように感じた。この言葉から導き出される答えなど、分かりきったものだ。最近の私はやけに予感が的中する。

「それって、誰が見てもそう見えない?」

私が笑いながら当然のことでしょ?とでも言うように返せば、勘ちゃんは、そうだよね〜!といつとの笑顔で返してくれた。
私は、こうしてどんどん嘘が上手くなる。

ねぇ、勘ちゃん。
貴方は三郎が好きなんでしょう?

そう聞きたいけれど、聞けない。こんな関係で、私は彼等を友と呼んでも良いのだろうか。
でもそう安安と私の悩みは言えない。例えるなら、明日世界が滅びる時ぐらいだろう。

なんてね、と自分の積み重なる嘘を誤魔化すかの様に私はゆるやかに笑った。




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