11

周りはみんな敵だらけ

喉が渇いた。

冬なのにも関わらず、彼此一時間はそんなことを考えている。
どうしよう、どうしよう。私は雷蔵にとんでもないことを言ってしまった。

嫌われたら、どうしよう。

「翠、」
「さぶろ……」
「良かった、何も無くて。」

抱き付いてきた三郎の服をぎゅっと握り、現実を受け止めずにこのまま温かさと共に目を閉じたかった。でも、三郎が誰の味方になるのかは考えれば直ぐにわかる。
友情と愛情は、全く違うから。

そうなれば相談などとても出来ない。他の三人は……兵助くんと勘ちゃんは無理だし、そうだ。ハチくん。彼なら、話だけでも聞いてくれるだろうか。
チラリと彼の方を見ると、いつもの様に笑っているだけだった。そして雷蔵も。





→ →


「ハチくん、えっと、隣良い?」
「あぁ、いいぜ!それで、話って何だ?」

彼を呼び出して近くのベンチに座った。話を始める前だからだろうか、妙にソワソワする。

「あのね、えっと……その、ら、雷蔵のこと何だけど……」
「……雷蔵?、雷蔵が、どうかしたのか?」

少し詰まるその質問に、疑問を抱えた。何故だろう。何か嫌な予感がする。


「雷蔵と兵助くんってどう思う?」

違うのに。こんなことが聞きたい訳じゃ無いのに。
あの二人はただの友人。それ以上でもそれ以下でも無い筈なのに。

飛んで火に入る夏の虫
その諺が今の自分にはお似合いだ。

「雷蔵と、……兵助か。」

何か意味深な間を開けて、彼と私は目が合った。心を落ち着かせようとすればするほど、いつもどうやって行動していたか忘れる。

「なぁ、翠はどこまで知ってんだ?オレが、兵助のことどう思ってるかも、もう、」
「知ってるって、何のこと?さっきね、雷蔵に兵助くんの話をしたら雷蔵が止めて、って言ったから、何かあったのかと思って……。それで、兵助くんがどうかしたの?」

私が自然に首を傾げれば、彼はいや、と言葉を繋いだ後、いつもの様に笑った。

「何でもねぇや!それより、雷蔵と兵助?オレが知る限りでは何もねぇけどなぁ……」

何だ、やっぱり、

「うーん、そっか。変なこと聞いてごめんね。」

私の味方なんて、どこにも居なかったんだ。




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