04

揺れる足と振れる心

もうすぐ一年が終わる。

世はクリスマスで浮かれているが、私はそんな場合では無い。
毎年、クリスマスは幼馴染みと過ごしていた。年越しも、初日の出も、お正月も、七草粥も一緒に食べた。
でも、今年は出来ない。お正月は別でも、クリスマスは駄目だ………ううん、お正月も駄目だ…。きっと、最愛の人と一緒に過ごしたいはずだ。
寂しいけど、今年は一人かな……と少し気分が下がっていた。

ケーキでも買って、テレビでも見ていれば、直ぐに終わる。1日なんて、短いものだ。そうだ、お母さんの為に美味しい料理でも作ろうかな、と考えていた。


そう、私は考えていた。幼馴染みとは過ごさないクリスマスを。



だから、その前日。私は怒られた。

「えっ?今年も一緒に過ごすんじゃないの?」

雷蔵のその言葉からはじまった。

「何で先に言わないんだよ。」
「ご、ごめんなさい……。忘れてました……。」
「そもそも母親仕事だろ。一人なんじゃ無いのか?」
「お母さんも、仕事早く終わるの。だから一緒にクリスマスパーティーしよう、ってなって、」

咄嗟に出た嘘。最近、嘘ばっかりだなぁ…と私は少し苦い言葉を飲み込んだ。

「……ふぅん。」
「だから、今年は二人でクリスマスしてね。」
「……家でパーティーするのか?」
「え?うん、そうだよ。どうかした?」
「いや、なんでもない。良かったな、久しぶりに母親と過ごせて。」
「そうだね〜。翠のお母さんはいつも忙しそうだから。」
「うん。楽しみ。」

三郎も雷蔵も笑顔でそう言ってくれるから、まるで私がそんなクリスマスを過ごせるような気分になった。

その日、お母さんは夜勤で居ないのに。

「あ、でも今日は大丈夫だよね?ファミレス寄って帰らない?」
「えっ……いいの?」
「何言ってるんだ。当たり前だろう。」
「うん。じゃあ、行こうかな。何食べよう…」

楽しみだな、と、私は足を揺らして笑顔になった。
じっ、と。二人が私を見てくるものだから私は少し焦った。本当は邪魔だと思われているのではないかと。

「……どうしたの…?」
「………いや、なんでもない。」
「翠は可愛いね。」
「え?雷蔵…?」

ふふ、と笑う雷蔵の意図が読めなくて、私は少しだけ焦った。その後三郎が髪の毛を乱してきたので、私はもっと混乱しながら、三人で教室を出る。
それでも感じることは同じで、私はいつもの様に過ごせる今が幸せだった。

やっぱり、三人が一番楽しい。




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