タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/07/29


「キャプテンなんかきらい」

 ひゅ、と心臓が止まった気がした。嫌いだなんて言いながら、じゃあこの体に絡みついてる腕はなんなんだ。はだけた肌に描いたタトゥーに頬擦りする顔はなんなんだ。なんてことを揶揄う考えが瞬時に出ないほど時間が止まって、脳をどこかに置いてきたのかと思うほど頭が働かなかった。

「私たちのこと、寂しくても死なないと思って、放ってばかりのキャプテンなんかきらい」

 理由を教えてくれたのは口から出す言葉の方向性を考えるのに大変助かるがその後にまた心臓が止まりそうになる言葉を続けて言うのはやめてくれ。すん、と鼻を啜る音がして、また動揺する。

「だいすきだから、きらい」

 ひっ、と喉を引き攣らせる音を鳴らしてとうとう涙を流し始めたのか、肌にぬるい液体が滑る。

「キャプテンのこと、すきだけど、すきだから、寂しくなる、……きらい。キャプテンなんか、」

 急に無音になったことに驚いたのか密着していた頭を上げて視線が合う。それもだめだ。ようやく動くようになった右手は、声帯を取り上げることに使って、そうして左手で濡れた瞳を覆った。

「やめろ、悪かった、頼むからやめてくれ、頼むから、寂しかったならそれの埋め合わせは充分にする。おれが悪いのはわかってる。ちゃんと反省する。いくらでもなじってくれていい。だから、きらい、だけは言うな。頼むから。好きな女に何度もきらいだと言われるおれの身にもなってくれ」

 瞬間、体に巻き付いていた腕がおれの胸元を勢いよく押して油断をしていたおれから見事に抜け出してばちりと目が合う。音がなくてもわかる。言われた通り、ばか、ばかりかたどる唇にようやくほっとして、顔が真っ赤に染まって悲しい表情が消え失せたことにもほっとした。