タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/01


 人外じみた戦闘能力ばかり持つこの船の中であまり秀でた才能もない私はいつも後方支援でひっそり逃げ回っている。けれど敵からすれば後方でちょこまか動く弱そうな女なんてネギを背負ったカモでしかなくて、パチン、と目があった瞬間いつもいつも嗚呼素晴らしい人生だった……なんて走馬灯が流れるほどみなさん素敵な笑顔をなさる。やめてほしい。それでも近距離の武器を持つ敵だったら、ゾロやサンジくんたちが後方の私たちに敵を近付けさせることなんてないのだけど、その手に持っているのが銃だったら、なす術もなく。だけどこの海一番の狙撃手はうちのウソップで、ウソップが敵じゃない限り揺れる海上で急所に命中なんてそうそうない。ウソップがうちの狙撃手で本当に良かったなあ、なんて思いながら撃たれた脇腹を抑えながら甲板に倒れ伏した。チョッパー!と誰かが叫んだ声が聞こえて、ああ、うちには心優しくて優秀な船医もいた。チョッパーがいれば、どんな怪我だって、どんな病気だって治るんだから。本当に私はこの船に乗れて良かったなあ。そう思って意識が途切れた。

  ▼▼▼

「イッ」

 だ!と全く可愛くない汚い声を上げて目を覚ます。さっきまで大砲の音やらなんやらで騒がしかったのが嘘のように波の音まで聞こえる穏やかな空気に瞬いた。さっきまでの戦闘は夢だったんだろうかなんて思えてしまうほど穏やかで、だけど脇腹には真っ白なガーゼが貼られてあって可愛くない悲鳴をあげてしまった原因がしっかりあった。
 それから、腕。腕?
 綺麗に脇腹を避けてはくれているものの私の体には太い腕が巻き付いてあって混乱する。驚いて反射的に身動いで背中が暖かいことにも気付いて固まる。腕、と、背中の感触。

「ぞ、ぞろ?」
「てめェ何撃たれてやがんだ」

 ぐ、と腕に力を込められて息が詰まる。アッやめてほしい。骨が折れてしまう。冗談じゃなく。混乱していても生存本能は働いて本当に考えるべきことを横に置いてまでそんなことを考えてしまった。違う。考えるべきは骨が折れるとかそんなことじゃない。どうして私は保健室のベッドに寝転がされるんじゃなく、ゾロの硬い膝と逞しい腕に抱かれているのかを聞かなくてはいけない。

「そ、そんなこと言われても。とりあえず離して」
「あ? なんでだよ」
「なん、なんで? なんでがなんで?? いや、ゾロこそどうしてこんな体勢」
「ここが一番安全だろうが」

 憮然と言われた言葉に、確かに、だなんて一瞬納得しそうになってかぶりを振る。違う違うそういう話じゃない。

「あ? おれの腕を疑ってんのかてめェ」

 そんな私の反応に、否定をされたと思ったゾロの声が怒りに滲んで首を振り続ける。傷口に触れないように配慮はしてくれてるもののどんどん締め付ける腕の力まで上がっていっていてただでさえ撃たれて弱った体が耐え切れるわけもなく、気が遠くなりそうで。だけど勘違いで怒ったままのゾロをそのままにするのも忍びなくて力を振り絞る。

「世界で一番安全なのは、ゾロの背中で、しょ……」

 くたり、と力が抜けてゾロに思いきりもたれかかりながら言葉だけはしっかり紡いだ。今更遅いけれども腕の力が抜けて、なるほどな、と毒気のない声が聞こえて意識が遠ざかりながらもホッとした。のに、力が抜けてくったりとした私を軽々と抱き上げて背中側でおんぶしようとしているらしいのを悟ったのを最後にああもうダメだと意識が飛ぶことに抗うのをやめた。そういうことでもないんだよ。
 頼むから私が次に目を覚ますまでに誰かしらがゾロを説得できていることを祈って目を閉じた。