タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これの続き
2021/07/31


 ぼこ、と口から空気が逃げていく。馬鹿なことをしている自覚はある。こうして水底から太陽や、月を見上げるのは何度目だろうか。小魚たちはもう鉤爪にも慣れたのか、怖がりもせずおれを水面に押し上げようとしている。確かに少し沈むのが遅くなっている気はするが、大概意味のない支えに小さく笑った。ぼこ、と空気の泡の隙間から猛スピードでこちらに向かってくる目当てのものが見えて気が抜けたのか重くなった体重がぐん、と下がった気がして、伸びた手に捕まった。
 呆れたような顔をしている。わかっている。何度も何度も何度も、死にかけてまで海に近付く金槌な海賊を呆れてるんだろう。だけどお前が悪い。お前が、拾ったんだ、このおれを。足を滑らせた、だの、突き落とされた、だの、嘘に塗れた言い訳の数々も尽きて、海賊らしくお前から海を取り上げ囲うこともせず何度も海へ落ちて。そうまでして命を投げ捨てる行為を何度もしてしまった自分自身に腹を括った。ただ欲しいだけならこんな馬鹿げたことはしなかった。お前から海を奪って、自由に海を駆け回る姿を見れなくなるのは嫌だった。
 逃げれば良いのに、何度も海へ落ちるおれを呆れながら助けに来るから目をつけられるんだ。嫌なら見捨てればいい。海の中じゃか弱いおれはそのまま海の藻屑になって、おれに付き纏われることもなくなる。

「……ねえ、大丈夫?」
「げほっ、ごほっ、」

 海面に出て急な酸素に喉が耐え切れなくなる。こんな醜態を何度も晒して、自ら海に飛び込みお前を待つおれは本当に馬鹿で、愚かだ。

「海に出るときは誰か泳げる人と一緒にいた方が良いと思うの」

 顔にかかる前髪を優しく後ろへ撫でつけながら咳き込むおれに意味のないアドバイスをする姿が滑稽で思わず咳混じりに笑う。

「この辺りなら私がいるけど、私のいない場所で溺れたらどうするの」

 ぷかぷかと浮かびながらとうとう的外れでしかない説教じみた言葉までかけてくる始末で、咳がおさまった喉はただ笑いに震えた。

「お嬢さんのいる海にしか落ちねェさ」
「え?」
「会いたくて飛び込んでるだけだからな。一度拾ったもんの責任は取れよ」

 こんなにもおれを狂わせ、腑抜けにさせた責任を取ってくれ。

続き