タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/01


 人外じみた戦闘能力ばかり持つこの船の中であまり秀でた才能もない私はいつも後方支援でひっそり逃げ回っている。けれど敵からすれば後方でちょこまか動く弱そうな女なんてネギを背負ったカモでしかなくて、パチン、と目があった瞬間いつもいつも嗚呼素晴らしい人生だった……なんて走馬灯が流れるほどみなさん素敵な笑顔をなさる。やめてほしい。それでも近距離の武器を持つ敵だったら、ゾロやサンジくんたちが後方の私たちに敵を近付けさせることなんてないのだけど、その手に持っているのが銃だったら、なす術もなく。だけどこの海一番の狙撃手はうちのウソップで、ウソップが敵じゃない限り揺れる海上で急所に命中なんてそうそうない。ウソップがうちの狙撃手で本当に良かったなあ、なんて思いながら撃たれた脇腹を抑えながら甲板に倒れ伏した。チョッパー!と誰かが叫んだ声が聞こえて、ああ、うちには心優しくて優秀な船医もいた。チョッパーがいれば、どんな怪我だって、どんな病気だって治るんだから。本当に私はこの船に乗れて良かったなあ。そう思って意識が途切れた。

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 ひぐひぐ、と泣き喚く声が耳をくすぐって目が覚めた。なんだか手がなまぬるい。なんでだろう、と視線だけ動かせば丸い金糸に私の手が隠れていて瞬く。寝ぼけ眼がしっかりしだして、その丸い金色がサンジくんの頭で、ベッドの横に跪き俯いたサンジくんの金色の髪の毛に手はすっぽり隠れてしまっているけれど額に祈るように私の手がくっついているんだろうなということがなんとなくわかる。じゃあこのなまぬるいのはたぶん、サンジくんの涙かな、と当たりをつけて名前を呼ぶ。一音目で弾かれたように顔を上げたサンジくんの目は溶けそうなほど涙で溢れていて握られた手をぎゅうと握り返す。

「れでぃ」

 泣き過ぎたのか声が掠れて私なんかよりよっぽど可哀想に見えてしまう。ちょっと撃たれただけだよ、なんて言ったら話もできないほどまた泣き喚きそうだから余計なことは言わないに限る。サンジくんはちょっと、いや、だいぶ過保護だから。

「ちょ、チョッパーが、手術したんだけど、うちのドクターでもあと、痕が、のこっちまうって」

 言いながらまたドパァと涙を流し始めたサンジくんに納得する。なるほど、レディの体に銃創が残るのが今日のサンジくんの涙の理由だったのか。でもサンジくん、私だって海賊で、麦わらの一味で、傷痕は結構そこかしこにあるんだよ。生きてみんなといられるなら傷痕くらい安いものなのに。

「サンジくんは体に傷がある女の人はきらい?」
「なん、なんてこと言うんだ、……レディが生きてくれてるならそんな、どんな傷があろうとレディはレディなだけで美しくて可愛くて素敵で、」

 頷かないことなんてわかっていたのにわざわざ言うのは意地悪だっただろうか。でもわかりきったことでも言葉で聞きたくて。涙の混じる悲壮な声で美辞麗句を紡ぐサンジくんの方がよっぽど私より私の体のことを心配してくれていて思わず笑う。

「サンジくんが気にしないなら良いの」
「気にするわけねェよ、他のヤロウだって、レディの傷痕に文句つけるならおれが三枚にオロスから、だから、心配し、」
「他の男の人のことなんてどうでも良いの。サンジくんが気にしないなら大丈夫だから」
「え?」

 ぼろぼろと流れ続けていた涙が蛇口を閉めたように急に止まって頬が緩む。意味がわかったんだろうか。涙が止まったってことは言葉は届いたんだろうけど、きちんと頭で理解したんだろうか。

「サンジくんが大丈夫なら良いの。他の男の人には見せる予定はないから」

 ひゅ、と息を呑む音と共に真っ赤に染まった顔色に満足した。