タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/01


 人外じみた戦闘能力ばかり持つこの船の中であまり秀でた才能もない私はいつも後方支援でひっそり逃げ回っている。けれど敵からすれば後方でちょこまか動く弱そうな女なんてネギを背負ったカモでしかなくて、パチン、と目があった瞬間いつもいつも嗚呼素晴らしい人生だった……なんて走馬灯が流れるほどみなさん素敵な笑顔をなさる。やめてほしい。それでも近距離の武器を持つ敵だったら、ゾロやサンジくんたちが後方の私たちに敵を近付けさせることなんてないのだけど、その手に持っているのが銃だったら、なす術もなく。だけどこの海一番の狙撃手はうちのウソップで、ウソップが敵じゃない限り揺れる海上で急所に命中なんてそうそうない。ウソップがうちの狙撃手で本当に良かったなあ、なんて思いながら撃たれた脇腹を抑えながら甲板に倒れ伏した。チョッパー!と誰かが叫んだ声が聞こえて、ああ、うちには心優しくて優秀な船医もいた。チョッパーがいれば、どんな怪我だって、どんな病気だって治るんだから。本当に私はこの船に乗れて良かったなあ。そう思って意識が途切れた。

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「お前、笑っただろ」

 起き抜けにルフィの声を投げ付けられて首を傾げる。声のした方に顔を向ければ、いつもはチョッパーがちんまりと座っている椅子にルフィが座っていた。麦わら帽子を深くかぶって俯いてるせいでルフィの表情は見えないけれど、怒っているのはなんとなくわかる。

「撃たれたあと、笑っただろ」

 なんでだ、と揺れる声は怒っているんじゃなくて悲しんでくれているんだとようやく働きだした頭で理解できた。

「……ルフィに言われたくないなあ」

 そして思わず笑う。わりぃ、おれ死んだ、とあっけらかんに民衆に笑顔を見せたルフィに言われたくない。結局生きていてくれたけど、それでも肝が冷えたのに。

「おれはいいんだ!」

 未来の王様はとても傲慢でそんな一言で自分を棚上げする。ふふ、と絶えず笑いが溢れる私にとうとう顔をあげて拗ねているルフィと正面から目があって微笑む。手を伸ばせば言わんとすることを理解したルフィが怒られた子どものようにとぼとぼとした足取りで私の寝転んでいるベッドに近付いてきてくれて手を取る。

「不安にさせてごめんね」
「……おう」
「笑ったつもりはなかったんだけど、そう見えたのはみんなが好きだからだよ」

 ぎゅるん、とゴムを伸ばして私の手を絡め取ったのを見て不思議そうに、だけど、おれも好きだぞ、と同意を示すルフィにもう一度視線を合わせる。

「みんながいることに安心しちゃって。だってうちには最高のドクターがいるでしょ? だから安心して気絶しちゃった、ごめんね」

 むむむ、と唇を尖らせて複雑な顔をするルフィの頬を絡め取られていない自由な手で撫でる。仲間が褒められて嬉しいけど、仲間が傷付いたことが悔しい。それはそれ、これはこれ。ルフィの中でぐるぐるとふたつの事柄が駆け巡っているのがゆうに想像できて笑ってしまうのを堪える。ここで笑ってしまえば我らが船長はきっともっと拗ねてしまう。

「この船は世界一安心できる場所だから」