タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/03


「生きてた!」

 ぶわりと砂を纏って急に目の前に現れたおれに怯えることもなく、寧ろ歓喜の声を上げた女に眉を顰める。そんな反応をされるようなことをした覚えはない。行く当てもないしさてどうするか、と考えてたうちに名前すら知らない女の顔がふと浮かんだ、ただの気紛れだ。おれが悪人であることはわかっているはずなのにおれが生きていることを喜ぶ姿は謎極まりない。たまに宝石やら服やらを寄越したことはあったかもしれない。覚えていないが。また何かもらえるのかと喜んだのか。それでも今のおれからは何もねだれないというのは見ればすぐわかるだろうに。指につけていた宝石も、高そうな服も、靴も、それどころか地位も偽物の名誉も失った。そんなおれには何も価値などないはずなのに、生きてた、と喜ぶのが本当に分からなくて何も言えない。そもそもおれはこの女の名前だって覚えていない。ということはきっと今までだって碌でもない扱いしかしてこなかっただろう。そんな男が現れてどうして喜べるんだ。

「怪我はありませんか? お腹はすいてますか? 眠れてますか?」

 喜んだかと思えば今度は心配そうにおれの体をじろじろと検分し始める親鳥のような姿に呆れる。

「とりあえず」
「はい」

 弾かれたように顔を上げて返事をする姿を見下ろす。

「……とりあえず、名前を教えろ」