タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/08/04
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雪だ、と歓声を上げた瞬間子どものように走り出そうとしたのを見て無意識に手を伸ばしていた。降り積もる雪に輝かせていた目をまんまるに見開いて不思議そうに見上げる姿をおれも不思議に思う。男女の差なのか、おれの手がでかいのか、クルーの手首が細いのか、ゆうにひとまわりした細い手首に力加減を間違えれば折ってしまいそうで少しだけ緩めた。他のクルーは海賊とも思えぬテンションで楽しそうに雪合戦まではじめていて、スタートダッシュを阻止された目の前のクルーはおれと周りをちらちらそわそわ交互に忙しなく視線を動かしている。
手を離せ。わかっているのに脳が体に信号をきちんと送らなくて時が止まったかのように固まったまま、困らせている。
「ぎゃっ」
素っ頓狂な悲鳴をあげたのが耳に入って疑問に思う。声を上げるタイミングがおかしい。急に手首を掴まれ他のクルーたちと駆け出すことができなかったタイミングで声を上げるならまだしも今この瞬間に声を上げるのはあまりにもタイムラグが過ぎる。自分の奇行を棚に上げて目の前のクルーの奇声に眉を顰めていれば急に飛び跳ねはじめた。更なる奇行に今度こそ、なんだ、と声をあげようとして喉が張り付いていることに驚いた。掴んでいない左手がおれの首根っこに届いた瞬間、体重をかけられてされるがままに上半身を倒す。ぐいぐいと慌てたように自分の体におれの顔を押し付けられて目の前が暗くなった。
「キャプテン、キャプテン、なにか悲しいことでもありましたか? 船に戻りますか?」
おれがされるがままなことに安心したのか首根っこから後頭部に手が移動して撫でさすられる。その行動と言葉にようやく喉が張り付いていた理由がわかった。涙を流している。それをおれより小さな体でおれのそんな情けない姿を隠そうとしてくれていて、心配されている。
白い雪に、無意識に心が持っていかれた。目の前のこのぬくもりが離れていってしまうのかと不安になって引きとめた。引きとめなくても他のクルーたちと共に雪合戦に興じるだけなのに。理由を自覚した瞬間溢れる感情が止まらなくて涙が溢れた。
「大丈夫、大丈夫ですよ、キャプテン、みんなここにいます、大丈夫、泣かないで」
泣いている理由が皆目見当もつかないんだろう。当然だ。言ったことなんてない。なのに自分が泣きそうなほど声をふるわせて訳もわからないくせにひたすらおれを心配する声にもう少しだけ甘えたくて、空いている手で腰を引き寄せて擦り寄った。
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