タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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これのサンジくん視点
2021/08/09
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宙ぶらりんのまま気持ちの行き場を失っていたはずの恋心が彼女と再会した瞬間一瞬で体を支配して、諦めの悪さに苦く笑ったのも良い思い出だ。おれが馬鹿だった。あんな素敵なレディを諦められるわけなんてねェのに。毎分毎秒強く美しく輝くレディにおれの心臓は落ち着く暇なんて一切なくて、寧ろ2年分の空白を埋めようと心臓はただひたすら必死に動く。
あまりにも心臓が高鳴って胸が苦しくなるもんだからチョッパーに診察を頼んだティーンすぎる行動は思い出すたびに頭を抱える。なんの問題もないと分かったときのあのチョッパーの心底嬉しそうな顔。やめてほしい。年下にそんな微笑ましそうな顔で見られるのはつらい。チョッパーは普段はあんなに馬鹿正直で嘘なんてつけないくせに患者を守るためならしれっと嘘をつけてしまう立派なドクターだから、おれのこの馬鹿みたいな行動が誰かに漏れることはないとわかっていてもそれでも恥ずかしいもんは恥ずかしい。
おれが恋した人はいつだって輝いていて常におれの中に存在して、だからだろうか。かぐわしい匂いをふわりと漂わせた美しいレディがありがたくもおれを客として選んでくれたのに、おれが一言二言話しただけで、あら、あなた大事な人がいるのね、だなんて悟られてしまって夕日のせいだけじゃなく皮膚が赤く染まった。そんなにわかりやすいんだろうか。大事な人がいる人には手は出さないわ、淑やかに笑うレディに思わず、まだ片想いなんだ、と呟いた瞬間、艶やかに潤んでいた瞳が少女のように輝いて思わず促されるままに恋バナというものをしてしまった。こんなところが好きで、あんなところが好きで、おれだけが独り占めしたいレディもいて、女性の前で別の女性を褒め称えるなんて褒められた行動ではないかもしれないけど、目の前のレディがそれを促しきらきらと瞳が輝いていたから許されたと思いたい。
想いが伝わると良いわね、と最後には応援までしてもらって、レディの貴重な時間をただ割いてもらっただけだったことに申し訳なくなった。
チョッパーを待たせてしまったかもしれないと急ぎ足で戻った船には、さっきまで話題の中心だった彼女がいて思わず浮き足立ってしまったのは仕方がない。くすくすと楽しそうに笑ってくれるから調子に乗って素敵なプランを語ってチョッパーを追い出した、はずだったのに。うっとりとしたふたりきりの時間が待っていたはずなのに。お土産のワインを飲んでからレディの表情がどんどん暗くなっていって狼狽える。レディの機嫌を損ねるような何かをしてしまっただろうか、ゆらりとレディの体が傾いて思わず支えようと伸ばした腕が宙に浮いたまま固まる。胸元に擦り寄る姿がかわいくて、愛らしくて、そして訳がわからない。なんで急にご褒美もらってんだおれ。わからねェ。夢か? どこからが?
ぎゅう、と更にきつく腕を回されてこれは夢でもなく、そして酔ってふらふらになった体幹が傾いたのでもなくてレディの意思で抱きついてくれているということがわかってもパニックはおさまらない。
「サンジくんはずるい男の人だね」
涙に濡れた言葉にギョッとする。ずるい? 何が? レディから抱きしめられるという権利を唐突に手にしてしまったから? いやたぶん違う。レディの柔らかい体に思考回路がほぼ乗っ取られかけているけど必死に考えを巡らせても何もわからない。
「ごめん、レディ、おれ、なにかした?」
「……なにも」
すん、と更に涙を滲ませた声にとうとう宙に浮かせたままの手をそっと肩に添える。嫌がられなかったことにほっとして小さく伺う。
「レディ、島で何か嫌なことでもあった?」
「サンジくんは何か良いことあった?」
「いまがいちばんしあわせですレディ」
まるでひとつになりそうなほどぎゅうぎゅうと密着する体に今にも鼻血が出そうになるけど、どうにか絞り出した質問は見事に一瞬で返ってきてとうとう脳が弾けて馬鹿みたいに脳で考えていたことそのものが口から漏れた。おれの馬鹿。今レディは理由がわからないけどおれに抱きついてしまうほど何かにとても落ち込んでいて浮かれている場合じゃないのに何を空気も読まずに馬鹿正直に答えちまったんだ馬鹿。
「……サンジくんのばーーか」
「ゔ、ご、ごめんなさい……」
「でもそれがサンジくんなんだもんね。……ごめんね、全部八つ当たりなの」
「レディの気を晴らすことができるならそんな光栄なことはないよ、いつだっておれを呼んで。……次はもっと紳士に解決できるように頑張るから」
「ううん、サンジくんはサンジくんのままでいいの」
おれの反省の言葉に、ふふ、とようやく笑みをこぼしてくれたレディの表情がやっとおれの目に写って今更ながらにこの距離感に心臓が高鳴る。レディが胸元に擦り寄ったまま顔をあげてくれたおかげですげェ近ェ。なんでおれ手ェ肩に添えちゃったんだろ。離せねェんですけどもう今日ずっとこのままでもいい? レディ笑ってくれてるしもうこのままでも良くね?
「サンジくんはそのままが一番素敵」
はにかんだ笑顔がほぼゼロ距離で直撃してかわいさと愛しさの暴力に目が死ぬかと思った。
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