タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/11


「痛かった?」
「あ?」
「ピアス」

 唐突な質問にそもそも何を尋ねられているのかがわからなくて視線を向ける。柔らかそうな耳たぶを触りながらおれの耳元に目を向けて、次いで言われた言葉に納得した。

「あけんのか」
「悩んでるの。イヤリングでも良いんだけど、いつの間にか落としちゃってることが多いから」

 不貞腐れたように呟かれた言葉に思わず喉を鳴らす。

「痛かった?」
「痛いだなんだをおれに聞くか?」

 この胸の大きな傷や、足の傷やらなんやらを見て、たった3つ穴を開けるくらいの痛みをおれに聞いたところで答えは分かりきってるはずなのにわざわざそれをおれに聞きにくる意味がわからない。

「……痛かった?」
「痛くねェよ」

 尚も聞いてくるのに根負けして思わず笑いながら答える。

「じゃあゾロが開けてくれる?」
「はあ?」
「痛かったらゾロのせいにしようと思って」
「なんでだよ」

 どういう理屈だ。思わず突っ込んでしまったけどどうやら本気のようでずっと耳たぶをふにふに触っていた手とは反対の手に氷嚢と細い針を握っていてそれを差し出してくる。なんでだよ。

「おれは痛くなかったけどお前はいてェかもしんねえだろうが」
「開けてよ」
「チョッパーに頼めよ」
「ゾロが良い」

 きっぱりと言い切られてまた根負けする。結局いつも押し通されるんだから二つ返事で頷けばいいんだろうが、なんだかそれも癪でいつもどうにか逸らしても結局は負けてしまってただ会話を引き延ばしているだけになる。別に嫌なわけじゃないが、いつも良いように使われていて自分に呆れる。おれはこんな甘い男だったか。

「わァったよ、ほら、耳冷やしてこっちこい」
「ありがと」

 嬉しそうに駆け寄る姿にため息をつく。おれの隣に座り込んで髪の毛を反対側にまとめながら耳を冷やしている間に針を受け取る。

「今までそんなに落としたのか」
「うん。片方しかないイヤリングがたくさんあるの」

 は、と笑えばまた不貞腐れて唇を尖らせる表情豊かな横顔に目を細める。肌色だった耳たぶがどんどん冷えて赤くなっていくのを眺めながら針をもてあそぶ。もういいんじゃねェか、と言えば、まだあとちょっと、と渋る姿に無理矢理氷嚢を取り上げた。驚いたように慌てて取り返そうとする手も耳も真っ赤だ。もう感覚もねェだろう。じっとしてろ、と呟けば一瞬でかちこちに固まってぷすりと針を貫いた。

「……あいた?」
「開いた」
「いたくない」
「今はな」
「えっ」
「感覚が戻ったら多少は痛むだろ」

 うそつき、みたいな目で見られてもおれは痛くねェけどお前は痛いかもしんねェぞってちゃんと忠告した。そんな目で見られる謂れはねえ。のにその目で見られるとなんだか罪悪感が湧く。やめろ。おれはお前の頼み聞いてやっただけだ。

「反対は開けねェのか」
「……とりあえず片方だけでいい」
「ピアス持ってんのか」
「こないだ島で買ったの」

 痛みを恐れたのか唇を尖らせながら首を振ったのに、次いで聞いた質問にすぐに嬉しそうに笑顔を見せるからその切り替えの早さに呆れる。見て、とポケットを漁って目の前に突き出してきたのは金色に輝くピアスで瞬く。

「ゾロのに似てるでしょ? おそろい」

 んふふ、と嬉しそうに笑う姿に心臓が一瞬変な動きをした。