タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/08/19
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島に降りたはずの愛しのレディが一時間やそこらで戻ってきたのに浮かれる間もなかった。すんすんすんすんと可愛らしく鼻をひくつかせながら自分の服をつまんで首を傾げているから不思議に思う。
「レディ、どうしたの? 新しい香水でも試してきたの?」
すん、とおれも鼻をひくつかせてから、やべ、と気付く。ちょっと今のは変態くさかっただろうか。いやまあ、今更なんだけど。レディはしまったと思って口を閉じたおれを不思議そうに見上げたりなんかしなくてただひたすらすんすんと自分の服の匂いを嗅いでいる。かわいらしいおへそが見えてますけど大丈夫ですか。見せてくれてるんですか。ありがとうございます。眼福。心の中で拝みながらじっと眺めてようやくレディがおれを見上げておれも慌てて視線を合わせる。かわいらしいおへそなんて見てません。
「……私、くさい?」
「ぇあ?! なん?! は?! そんなことあるわけねェけど?! いつも美味そうな匂いしてますけど!」
へにょん、と眉毛を垂れて悲しそうに呟くから思わず隠しきれない本音が爆発する。間違えた。いや間違えてはないんだけど、美味そうな匂いはちょっと、間違えた。下心が。ごめん。
おれの欲の出まくった下心なんかには気付く余裕なんてないほど悲しんでいるのかすんすんと鼻を鳴らしてまた匂いを嗅ぎはじめたレディに動揺してる場合じゃねェと頭を振る。
「どうしたの、島で何かあった?」
「くさいって言われた……」
「はあ?! だれに?!」
「知らない男の人……」
しょんぼり肩を落として落ち込んでいるレディとは裏腹に、おれは腹の底から怒りが沸々とわいてくる。いったいどこのどいつがこのかぐわしきレディに対してくさいだなどととち狂ったことを言ったんだ絶対に見つけ出して出港するまでに三枚にオロしてやる。ぎりぎりと歯を食いしばりながらとりあえず怒りは横に置いて謂れのない中傷を受けたレディを慰めなければいけない。
「レディ、たぶんそいつの鼻が腐ってたんだよ。レディからはいつも良い匂いしかしないよ。本当に。てかそいつはなんでレディにそんなことをクソ……絶対オロス……」
ただひたすら甘い言葉で慰めたかったのにそもそもの原因を思い出してすぐさま怒りが湧いてしまう。そんなおれを見て困ったように微笑む姿は愛らしいけど、だからこそこんなに優しくて可愛くて素敵なレディを傷付けた奴が許せない。
「最初は普通に笑顔で話してくれてたのに、急に、男臭いって」
「……まって、くさいじゃなくて、男臭いって言われたの?」
レディの証言が変わって眉を顰める。
「? うん、……一緒でしょ……? やっぱり私くさい?」
一緒じゃねェ。くさいと男臭いじゃだいぶ意味合いが変わる。最初は笑顔で話していたのに急に手のひらを返したその男の言動にひとつ可能性を思い至って思わず舌打ちをした。おれの舌打ちに驚いたのか目を丸くして見上げてくる姿に謝りたいけど、
「……レディ、口説かれてた?」
「くど……え? 普通に話してただけだよ」
「そのクソ野郎が男臭いって言う前、なんて言われたの?」
「なんて……案内しようか?って……さすがに私も海賊だから断ったんだけどそしたら……親切な人だなって思ってたのに、急にくさいって言われて、ちょっと、」
へら、と傷付いたように笑う純粋なレディにぎゅ、と胸が痛くなる。それたぶん、口説かれてたんだよ。そんでたぶんレディはきっと優しいから話を聞くだけならまだしも海賊が親切な島民(仮)と過度な関わり合いを持っちゃ相手に迷惑がかかるだろうと思って断った。でも相手は口説いてたつもりだから、今までにこにこ愛想良く話してくれて脈アリだと思ったのに断られたから手のひらを返してレディを貶した。笑顔で愛想が良かったから脈ありだと思った挙句手のひらを返して負け惜しみを呟いたただの逆恨みのクソ野郎なのにレディは素直に受け取っちまって傷付いてる。レディが魅力的な人だってことに気付けたことは誉めてやる。でもそのレディを傷付けたんなら話は別だ。オロス。
「ナンパ断られたからキレただけのみみっちいクソ野郎だよそれ。レディは何も悪くない」
「……あ、……ナンパ」
まさに目から鱗とでもいうようにまんまるに開いた目をぱちぱちと瞬いて、ようやくすんすんと匂いを嗅いでいた服を離して照れくさそうに頬をかいていて微笑ましくなる。
「確かにそう言われればそうだったかも……。最近ずっとサンジくんの大袈裟な褒め言葉とプリンセス扱いに慣れちゃってたから普通に親切な人だと思っちゃった……えへ」
えへ、とはにかむ姿と言われた言葉が可愛すぎて胸を貫かれた。
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