タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/22


 ふと道端で金色の頭を見つけてふらふらと近寄った。私が近づいていることなんてきっとわかりきっているだろうに私がこっそり悪戯に近付く気配を察してそのまま無防備に背中を晒してくれるからその優しさに思わず頬が緩む。悪戯される本人の協力もあってそっと近付けた丸まる猫背をつん、とつつく。つついた人間が誰かわかってるサンジくんはくんにゃり体をとろけさせて地面に崩れ落ちて小さく笑った。手ぶらだから余計に盛大に崩れ落ちてくれてる気がする。なんっっって可愛い悪戯なんだァ、なんてくねくねしながら私に向き直ったサンジくんに笑って口を開いた。

「買い出し、終わったの?」
「うん、たくさん名物を仕入れたから明日の朝メシとスペシャルデザート楽しみにしててね」

 サンジくんのご飯がいつも美味しいのは当然だけど、楽しみにしててねと言われるときはスペシャルという名が体を表しすぎてすごく美味しいから今からお腹がきゅるると働いてしまいそうで慌てて気を引き締めた。さすがに恥ずかしい。

「じゃあお仕事を終えたコックさんは今からナンパしに行くの?」
「レディ……」
「あ、ごめん」

 ひん、と途端に表情を崩して泣きそうになるサンジくんに、いくら事実でも言われたくないことはあるよねと思わず謝る。今のは私のデリカシーがなかった。

「……おれァ、君を探しにきたんだよ」

 困ったような笑顔で見つめられて首を傾げる。何か私が呼ばれるような不都合でも起きただろうか。ルフィたちはまだ大人しくできているようで島は平和そのものだし、そもそもサンジくんは私の悪戯に気付かないふりをして背中を晒して付き合ってくれる程の余裕もあった。

「レディがいる場所はわかってた」

 見聞色に優れているもんね。みんなの気配を探ることなんて朝飯前だろうと頷く。

「賭けをしてたんだ」
「賭け?」
「そう。おれと」

 話が変わってさらに首を傾げる羽目になる。おれと、ってどういうことなんだろう。自分と賭けをしたってこと?なんのために?

「君を探して、君の目に付くところにわざと立って、レディがおれを見て見ぬ振りで声をかけてくれなかったら潔く諦めて船に帰る。自由時間なのにわざわざおれに声を掛けてくれたら覚悟を決めてレディをデートにお誘いする、って」

 ぱちぱちと何度か瞬きをしてサンジくんの言葉を頭の中で繰り返す。わざと、? どういう意味なのかがわからない。自由時間だからと私の意思を尊重して気を遣ってくれたんだろうか。サンジくんを見つけて声をかけない選択肢なんてないのに。そりゃ、サンジくんがナンパに勤しんでたら私だって気を遣って声はかけないようにするけど、ひとりでいる仲間を見かけて声をかけないなんてことはないのに。

「別にそんな気を遣ってくれなくたって一緒にお出掛けくらい私でよければいくらでも付き合うのに」

 綺麗な金色の髪を揺らして首を振るサンジくんにまた首を傾げる。

「そうじゃないんだ、レディ。でも今はまだわからなくていいよ。おれはレディが声をかけてくれて本当に嬉しいんだ」

 とろけきった笑顔も可愛いけど、なんだかまた違った、優しい笑顔を向けられて心臓がきゅうっと締め付けられた気がした。それが不思議で思わず胸元にそっと手を当てる私に恭しく手を差し出してきてまたにっこり笑われる。

「おれとデートしてくれる?」