タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/08/24


「あだっ」

 壁にぶつかった感触がしてぶつけた鼻がぺしゃんこになっていないかの確認をしながら距離を取って走馬灯が走った。壁かと思った何かはクロコダイルさんで、恐る恐る視線を上げていく。すぐに謝りたいのに喉が引き攣って声が出せない。ばちん、と絡んだ目がいつものように暗く重たい色じゃなくて何か光が混ざり丸まっていて幼く見えて恐怖心がどこかへ飛んでいってしまった。ぱちぱちと瞬きを繰り返してもいつも鋭い視線は丸まったままで見間違えなんかじゃないことがわかる。
 珍しい目をしたクロコダイルさんに思わず惚けていたままだったけど、暫くすれば慌てていて狭まっていた視野が広がってまた喉がひくついた。いつもぴかぴかに磨かれている鉤爪が中途半端に持ち上がっていて息を呑む。消えた走馬灯がまた脳内を駆け回り出して無理矢理鉤爪から視線を外してまたクロコダイルさんの目を見て命乞いの言葉を口にしようとして、間抜けに顎が落ちる。

「くは、クハハハ」

 まんまるだった目は生身の大きな手で覆われ隠されていて、急に高笑いしだした姿にばくばくと心臓が最期の大仕事とでもいうようにものすごく働き出して痛くなるほど。

「……覚悟するんだな、お嬢さん」

 心臓以外はなおも固まったままでクロコダイルさんの高笑いを呆然と見上げていれば両手を下ろして隠されていた目があらわになる。ぱち、と絡まり合った目はまたいつものように鋭く重たかったけど、どこか楽しげに揺らめいていてまた心臓がおかしな動きをした。