タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/08/26
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「痛い?」
そっと優しい指先で頬に触れられて反射的に首を振る。そのせいでせっかくレディは触れるか触れないかくらいの優しいタッチだったのにおれが勝手に押しつけて呻いてしまう。おれの馬鹿。途端にレディの表情が悲しげに歪む。その表情の移り変わりにパックに隠されていたぼこぼこの顔の痛みなんかよりよっぽど胸が痛んだ。
「もう、うそはつかないで」
大丈夫だよ、と微笑んで誤魔化すより先に涙に滲む声が部屋に響いて息を呑む。
「言いたくないことは言わなくても良いの。でも、うそはつかないで。……こんなになって、痛くないはずがないでしょ」
恐る恐るそっとまた伸びてきた指がおれの頬に添えられてまっすぐ見つめられる。宝石のように潤んだ瞳は今にも涙が溢れ出しそうで、その原因はおれ。ルフィにも、ナミさんにも、レディにも、たくさん酷い言葉を吐いた。守るはずが、守られた。
「……痛い?」
涙を我慢しすぎたのか、ひっ、とレディの喉が震えながら再度聞かれた言葉に思わず腕を伸ばして抱き寄せる。みし、とぼろぼろの体が軋む音がした気がしたけど全然痛くなくて強く抱きしめて柔らかな髪に鼻先を埋める。一度もこんなことしたことないくせに、においもぬくもりも懐かしく感じてじわりと涙が滲んだ。急に抱き寄せられたのになんの抵抗もしないレディに、こんなに簡単に腕の中に閉じ込められるなんて、と自分で抱きしめてるくせに心配になってしまう。少し引っ張ればいとも簡単に腕の中に閉じ込めることができるか弱いレディを危険な目にあわせて、酷い言葉で罵って、どれだけ謝ったって償えるものじゃない。
「言いたくない?」
「いたい」
すん、と涙に濡れた声が体に直接響いて、負けず劣らず涙に濡れた声でレディの頭に顔を埋めたまま返事する。情けない声だ。言葉にしてみれば今まで我慢していた痛みが我慢できなくなって瞬いた拍子にレディの髪を濡らしてしまう。汚しちゃ駄目なのに、離れなきゃ駄目なのに、考えとは裏腹にどんどん抱き締める力は強くなる。
「いたいよ、レディ、おれ、おれのせいで、……いっぱい、迷惑かけた、ごめん、ごめんな」
「ありがとう、サンジくん」
「は、」
頭の中にたくさん浮かぶ言葉を選べずに並べるだけの情けない言葉の羅列を遮るように唐突にはっきり届いた言葉に固まる。ありがとう? ありがとう、って、言った?
「ここに、みんなのところに帰ってきてくれてありがとう、サンジくん」
固まって力が抜けてふたりの間に隙間ができた。そうだ、このまま離さなきゃ。レディの髪をおれの涙でしとどに濡らすわけにはいかない。放たれた言葉を脳が理解できていないくせにそんなことを思っていたのに背中に腕が回されてまたおれとレディに隙間がなくなる。
「おかえり、サンジくん」
ただいま、と言いたいのに引き攣った喉は嗚咽以外何も言葉を紡げなくて、ぼとぼとと零れ落ちる涙がレディの髪を濡らした。
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