タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/09/02


「ぅあちッ、お、でもこれ美味ェな!」

 サンジくんが悲鳴をあげながらも試供品を美味しそうに頬張っている後ろ姿をジュースを飲みながら眺める。聞いたこともない名前の食材の説明をされながら舌鼓を打っているサンジくんに、いいなあ、美味しそうだなあ、なんてほんの少しは思うけれど、私は焦らなくたっていい。サンジくんの舌はあの味を覚えて、そしてそれを更に私たち好みに仕上げてくれる。のんびり待てばいい。私たちは本当に恵まれているなあ、なんてしみじみ感動していた間にいつの間にか交渉が終わっていたらしい。腕いっぱいに食材を買い求めたサンジくんが邪魔にならないように壁際に寄っていた私の元へ満面の笑みを浮かべながらひょこひょこと近付いてきて私もついつられて意味もなく微笑んでしまう。
 でれ、と頬が溶けそうになったのも束の間、あいてて、と顔を顰めたサンジくんに瞬く。

「どうしたの?」
「いや、出来立てほやほやがおすすめだって言われたもんだから勢い良く口に入れたはいいんだけど、ちょっと、」

 へへ、と思いの外熱かったらしく恥ずかしそうに笑いながら濁すサンジくんに頬が緩む。舌先を火傷したのかちろりと口から覗く赤い舌はなんだか倒錯的でつい視線を逸らした先にジュースの入ったカップにひとつ、氷のかけら。そして不意に脳裏に浮かんだ悪戯。

「サンジくん、氷あげようか?」
「エッ♡ 間接キッス♡になるよ?! いいのォ?!」

 悪戯をする前にすでに目をハートにして体を液体のようにとろけだしたサンジくんに思わず笑ってしまう。

「これ、最後のひとつなの」
「んやァさしいッ! ────えっ」

 荷物ごと自分を抱きかかえて身悶えるサンジくんがぴたりと固まる。

「たべてもいいよ」

 からん、と音を立ててカップを傾けて口の中に滑らせた。あ、と口を開いてサンジくんに見せる。悪戯を仕掛けておきながら私の口の中は緊張でいつもより体温が高くて氷が溶けていく。氷が溶け切る前に、石のように固まってしまったサンジくんの答えは聞けるだろうか。