タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これの別視点
2021/09/06


「結婚してください」
「私にはもう心に決めた子がいるの」

 目の前で私に傅いて愛の言葉を囁いてくれたサンジくんに思わず笑う。だって、全く同じ言葉をうん年前に聞いたから。金色の丸い頭を揺らして、白い肌を真っ赤に燻らせて、声はまだチョッパーのように高く愛らしい声だったけれどまっすぐまっすぐに伝えられた言葉はすとんと私の心臓を貫いてずっと離れない。一輪の薔薇と一緒に渡されたオモチャの指輪。薔薇はとうに枯れてしまったけれど、オモチャの指輪は未練がましく肌身離さずずっと胸元にぶら下げている。
 サンジくんはきっと覚えてない。私も、サンジくんのくるんと巻いた可愛らしい眉毛を見なきゃサンジくんだって気付けなかったと思う。だけどそれでいい。よくある子どもの微笑ましい思い出。その思い出を後生大事に抱えている私の方がおかしい。それでも真摯な言葉が嬉しかったから。恋はいつでもハリケーンで、心臓に突き刺さった矢はいつまで経っても抜けないままだから、仕方ない。

「……レディに想われてるそいつが羨ましすぎて嫉妬で狂っちまいそうだ」
「ふふふ」

 サンジくんの苦々しい言葉に思わず笑ってしまう。だって、サンジくんがサンジくんに悪態をついてる。小さな子どもの頃の思い出を大人になってもずっと大事にしている私のことを、優しいサンジくんはきっと笑わないと思う。わかっていてもずっと隠し持っている胸元の指輪を出して覚えてる?だなんて聞くのはとても恥ずかしい。恋多きコックさんの子どもの頃の無邪気なプロポーズなんだから忘れているのが自然だ。だけどそれでも、小さな頃のその気持ち自体は昇華されてたとしても、そんなこともあったなと覚えていてくれたら。またそれだけでその思い出を抱えて幸せに浸れる気がする。いつか勇気ができたらそっとオモチャの指輪をサンジくんに差し出してみよう。