タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/09/08


「ハァン素敵なレディご機嫌いかが? おれはもちろん君に出会えたおかげで天にも昇る気持ちだよぉ〜」

 船から降りた瞬間、素敵な香りに釣られ反射的に口から賛美が溢れる。ナミさんやロビンちゃん、そして最近仲間になったあの愛らしいレディ。3人も素敵なレディが常に同じ船に乗っているけれど、それはそれ、これはこれで体に染み付いてしまった行動はそう易々と鳴りを潜めるわけもなく。
 3人のレディ達に傅く姿は見慣れたのかもしれないけど最近仲間になった愛らしいレディに見境がないのがバレてドン引かれたんじゃないかとぎこちなく振り返る。いやこれはですね、素敵なレディを見ると褒めない方が失礼というかなんというか。どうにかレディに引かれたくない精神で、だけど行動を改めることなんてできるわけもなく言葉を操ろうとしたのに振り返った先のレディはなぜか知らねェモブ野郎と談笑をしていて固まる。固まったのも束の間、体が勝手に動いてレディと愛らしいレディに愛らしく笑みを向けられてやにさがるクソ野郎の間に割り込む。睨みをきかせればそそくさと逃げるくらいの覚悟でうちの麗しのプリンセスにデレデレしてんじゃねェよクソが。

「あっ、行っちゃった」
「レディ大丈、」
「好みの男の人だったのにな」
「ぶ、え?」

 さあナイトとして不埒なナンパ野郎からレディを守るという役目を果たしましたよとドヤ顔で振り向いたのも早々に表情が崩れる。え?

「サンジくんはさっきの女の人ほったらかしでいいの?」
「え? 言い寄られてたんじゃ、え?」
「え? 私から声かけたんだよ。でもなんか、美人局みたいになっちゃって申し訳ないな」
「レディ、から?」
「好みだったの。サンジくんもナンパがんばってね! 私も頑張る!」
「え??」

 ────え??



「あー……サンジくん、大丈夫?」「え??」「飛んでるわね」「見事にね」「え?? どういうこと??」「まあ、サンジくんの女の子バージョンって考えたらいいんじゃない? サンジくんほど手当たり次第なわけじゃなくて好みはあるらしいけど」「私たちは女部屋でいつも話してたから知ってたけど、サンジは目の当たりにしたのははじめてだからものすごく戸惑ってるわね」「まあ別に危険な目に遭わなければ好きにすればいいし、サンジくんも次からは邪魔しないように」「え、無理ですけど」「どうして?」「どうして? どうしてってそりゃ、レディが、レディが、ええと」「サンジに止める権利はないわ。あなたも同じことをしているし、そもそも恋人でもなんでもないもの」「ロビン、私たちも行きましょ。私もさっきイケメン見つけたの」「うふふ、私も探そうかしら」「待っ、そんな、レディが危ないかもしれないのに、そんな」「私たちが男の人を探すこと自体は止めようとしないのね」「っ、そ、それは、ロビンちゃんたちは強い、し」「あの子だって新入りだけど、私たちの仲間よ」「それ、それは、その、」



 気付けばいつの間にか、ぽつんとただひとり、みんなに置いていかれていた。脳内だけが忙しなくぐるぐる回っていて、レディを引き留めようとして中途半端に腕を上げたまま銅像のように固まっていて、日が沈みきっていた。
 ふ、と瞬いた瞬間、華やかな笑顔のレディが視界に入って心臓が煩いほど動き出す。美しいマダムがおれを心配してくれたのか声をかけてくれた気がするけど何も返せない。あんなにも動かなかった体が勝手に動いてレディの腕を掴み取る。知らない男の声と、レディの驚いておれを呼ぶ声が同時に耳に入って涙が出そうになる。

「レディ、レディの好みの男になれるように頑張るから、だから、ナンパするならおれにして」

 涙が滲んだ声はあまりにもみっともなくて、だけど他にどうすればいいのかわからなくてただ祈るように驚きに目を丸くさせたレディを見つめて縋った。