タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これの別視点
2021/09/08


 涙は零れなかったけど、今にも零れそうなほど綺麗な瞳に水の膜をはりつけて私の腕を掴んだサンジくんの姿に、きゅ、と心臓が掴まれたような気がしたのはたぶん気のせい。わりと人通りの多い中、大きな声であんな風に縋られてしまえば噂は立ちどころに広まってしまう。この島ではもうナンパはできないな、なんて考えて隣に立っていた男の人に謝った。驚いたように目を白黒させていたけど激昂することもなく立ち去る良い男にまだ名前も聞いてなかったのに、なんてほんの少し名残惜しく思ったのが伝わったのかその男の人の背中を目で追っていた私の腕を軽く引いて振り向かせるサンジくんに苦く笑った。

「どうしたの」
「じゃ、ましてごめん、でも、」

 でも、と口をもごつかせるサンジくんを急かさず眺める。痴話喧嘩かな、あの人かっこいいね、なんて囁き声が耳に入る。

「サンジくん、かっこいいだって。ほら、あの子たち。声かけてきたら?」

 喜ぶと思って言ったのに、ぼと、と涙が落ちてギョッとする。

「そしたらレディは違う男のとこに行くの」

 低く甘い声が涙に引き攣って震えていてまた心臓が不思議な音を立てる。

「いや、うーん、たぶん私はもうこの島じゃナンパ成功しないと思うし。でもサンジくんなら大丈夫だと思うから」

 なんというか、お金を騙し取ったりしていないとはいえ二度も美人局のようなことをしてしまったようなもので。小さく笑って肩をすくめればずっと掴まれていた腕の力がほんの少し緩んでサンジくんを見上げる。ぽろぽろと雫を流したまま、だけどどこかほっと表情を緩めているサンジくんに首を傾げた。

「じゃあレディ、一緒にサニーに帰ろう」
「え、あ、うん、」

 私の言葉は聞こえなかったのか腕から手のひらに伝って絡められた指を引かれて思わず頷いた。