タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/05/26


 ぎゅう、と狭い路地裏でそっと体を密着させる。暴漢に追われている現状をこわくない、と言えば嘘になるけれど、目の前で私を庇って抱きすくめてくれる男の人の腕の中は世界で一番安心できる場所だから、きっと大丈夫。

「アデルとおじいさん、大丈夫かな」
「やつらはおれの顔しか知らねェだろうよ。悪ィな、巻き込んじまって」

 服の上からでもわかる筋肉の胸板がなんだか熱くてもぞもぞしながら首を振る。どたばたと足音が遠ざかるのがわかって無意識に潜めていた息を吐いた。

「おまえはおれが怖くないのか」

 真上から落とされた言葉に思わず顔を上げて後悔した。近い。顔が良い。声も良い。こんなことを思ってる私を心配してくれて、本当に申し訳ない。

「シュライヤとアデルとおじいさん、みんなと過ごすのが楽しいから、もし私に迷惑がかかるんじゃ、なんて勘違いして黙っていなくなられたりしたら、それは想像だけでとっても怖いよ」

 本当に怖いのはそんな幸せすら壊してしまうかもしれない私の恋心だけど、幸せな家族の時間をやりなおしている真っ只中の人にそんなことは絶対に言いたくなくて、二番目に怖いことをそっと呟いた。じっと何を考えているかわからない目で見つめられて、へらりと笑った。