タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
近所のお姉さん
2021/05/27


「なあ、メール、嫌いか?」

 窓と窓の逢瀬。困ったように眉を下げる姿に俺も困る。そりゃ俺だって気のないやつから貰うメールの扱いにくさは身に染みて理解してるけど、俺、別にそこまでしつこいメールなんて送ったことないだろ。本当は意味のないメールだって送りたいけど、そんなことしたら嫌われるのなんて目に見えてるし、だからちゃんと用事がある時くらいしか送ってねえだろ。なのにどうしてそれすらも。

「ごめんね、松田くんからのメール、開くのにちょっと、勇気がいるの」

 意味がわからない。だけどなんとなく理解した。今この人が言った「松田」は俺であって俺じゃない。お前、何したんだ、と心の中で憤っても仕方がない。俺はそいつじゃないのに。

「……わかった。ちょっと待ってろ」

 バンッと憤りがほんの少し窓を閉める力に込められてしまった。悪い。鞄を漁っても気の利いたものが出てくるわけもなく、ノートをビリッと適当に破く。乱暴に文字を連ねて二回、折り畳んだ。バンッと今度は急いた気持ちが出てしまってまた窓を乱暴に開いてしまって手持ち無沙汰に困りながらも待ってくれていた姿に言い表しようのない感情が込み上げる。それをどうにか抑えて腕を伸ばして紙を差し出す。
 不思議そうに眺める姿に、ん、ともう一度腕を揺らして促せば戸惑いながらも受け取ってくれて、読め、と再度顎で指し示す。

「手紙ならいいだろ」

 いいのか? 自分でやって、自分で促したくせに今更疑問に思う。完全に勢いでやってしまった。メールがだめなら手紙もだめな気がする。なんの解決にもなっていないような。
 だけど、顔を上げた先でどこか嬉しそうな表情でふっと微笑んでくれたから、まあ、いいってことで。