タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/03


 ぴったり背後に位置取るレディに最初は嬉しかったけど、どうしたんだいとにやけた顔で聞いてもなんでもないと微笑まれるだけ。レディがぴったり背後にくっついてくれるのは嬉しいけど構えないのが申し訳なくて仕方なくいつもより速度を早めて今日の用事は全て終わらせて、終わったよ、と言えばお疲れ様と労ってくれるから一日の疲れも吹っ飛ぶ。

「あとはもう寝るだけ?」
「や、レディとめくるめく愛のお話ししたりしちゃったりなんかして」
「んふふ」

 楽しそうに笑うレディに振られちまったかーと肩を落とす。後ろに手を回してエプロンを解こうとした瞬間、柔らかな何かとぶつかって固まる。レディの手。わざとじゃないんだ、ごめん、と当たってしまったことを詫びようと顔を向ければ楽しそうに笑ったままおれを見ていて謝罪も忘れて首を傾げてしまう。おれが固まっている間に、つ、と背後からおれの手に優しく触れて前に戻された。

「みんなのサンジくんはおしまい?」
「ん? え?」

 訳の分からない言葉に意味のない声だけがこぼれる。レディが楽しそうなのはおれも嬉しいけどどうしてそんなに楽しそうなのかがわからなくて頭にはてなが駆け巡る。

「エプロンしてる間はみんなのサンジくんでしょ?」

 どういう理屈なのかわからないけどレディが言うことは世界の正解なのでとりあえず頷く。わからなくてもレディが言うならたぶんそう。おれはレディのためだけのプリンスのつもりだけど。でもレディがそう言うならそうなんだと思う。たぶん。

「エプロンしてない間は私だけのサンジくんになってくれる?」

 脳に届いた瞬間、血が沸騰しそうになって鼻を抑える。大丈夫、鼻血は出てない。我慢できた。レディはきっと他意はない。ちょっとおれの脳内でめくるめく恋のロマンスが駆け巡ってしまったけど、たぶん他意はない。たぶん。

「サンジくん?」
「ヴッいやちょっとレディが可愛すぎて意識飛んだごめん」

 ふふ、と笑われてまた身悶える。かわいい。

「ねえ、エプロンしてない間は私だけのサンジくんになってくれる? だめ?」
「駄目なわけない」
「やった」

 やったあ、と無邪気な少女のように喜ぶ声と、するりとエプロンの紐を解く音の倒錯的のギャップにばくばくと心臓が動いてされるがままにエプロンを脱がされる。さっきまでおれが着ていたエプロンを胸に抱えて目の前に立ったレディに色んな意味でよろめいてしまいそうになるのをグッと堪えて地面に足を踏ん張った。

「今から寝るまでは私だけのサンジくんね」

 今にも鼻血を出して倒れそうなおれを見上げて嬉しそうに笑うレディに、もうおれ一生寝なくてもいい、だなんて思ってしまったけど残り少ない理性がきちんと働いてそれを口に出すことはなかった。