タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/10/05
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手紙をそっとロッカーに忍ばせた。手紙、とも言えないかもしれない。だって一枚の紙にすきとただ一言書いただけ。余白がすごい。だけどあれやこれや思い浮かぶことはあれどいざ文字にしようとすればなんだか嘘くさくなってしまって、最終的にその一言しか書けなかった。宛名も、差出人も書かずに、すき、ただそれだけ。
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「レディ、その、」
サンジくんは綺麗好きでおしゃれも大好き。すぐにロッカーの異変に気が付いたのか見覚えのある紙を両手でつまんで私の目の前に現れた。名前も書いていないのにその筆跡で私のものだと気付いたのか気まずそうに視線が揺れる。
「ええと、その、なに、なにがすき? 今日の朝に出したパンケーキ? それともおやつに出したパルフェ?」
しどろもどろに尋ねるサンジくんから視線を外した。えっ、と悲壮感あふれる音がサンジくんから聞こえたけど私だって傷付いてる。だって誤魔化された。サンジくんの作ってくれるものが美味しいのは当然で、毎食大喜びでおいしいおいしいと独り言でも直接でもきちんと口頭で伝えている。わざわざ紙に書いて、ロッカーに忍ばせて、それが食事についてなわけがないのに誤魔化された。宛名も差出人も誤魔化した私が自分を棚上げしていることはわかっていても悲しくなる。
女の子相手なら誰にだって揺らぐから、私にも揺らいでくれると思った。すき、とさえ書けばサンジくんのいつものたくましい妄想力で駆け足跳びに恋人の座につけると思った。だけどそんなことなかった。誰にでも優しいということは、誰かひとりに絞るつもりなんてないってことだった。
「もういいの、ごめんね、返して」
視線は戻さずサンジくんの方へ手を差し出す。誤魔化されて傷付いたけど、誤魔化してよかった。なんて自分に甘いことを考える。なにが好きかを書かなくてよかった。誤魔化されるより、はっきり断られる方がきっとつらい。
「い、いやだ」
「……?」
ほっと息をついて返されるものだと思った。はっきり言ったわけじゃないけど、誤魔化されたということは私がサンジくんを好きだということはバレている。そんな想いのこもった紙の処分なんて優しいサンジくんには困るだろうから返してほしいのに拒絶されて頭の中にはてなが浮かぶ。
「おれのメシのこと気に入ってくれただけだってわかってるし、勘違いなんてもちろんしないから返したくない。これはもう、おれの宝物だから」
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