タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
← →
2021/10/05
▼
「おい」
「なあに?」
「これ」
「?」
いつもよりどこか上機嫌なゾロの声に振り向けばちょっとした収納になっている緑の腹巻きから白い紙が出てきて首をかしげる。そんな私を見て片眉を上げて憮然とした表情になってしまったゾロに瞬いた。なに? 訳がわからないままゾロを見上げていればクソッと悪態をついた挙句舌打ちまでされて戸惑う。
「なんでもねェ」
「え?」
声をかけてくれた瞬間は確かにいつもより上機嫌だったのにどこか悲しみを含んだ声色で吐き捨てられて心配になる。
「お前からだと思ったのに」
くるりと踵を返したゾロの手から謎の白い紙がくしゃりと音を立てたのを聞いてどうしたの、と尋ねようとして固まる。そして不意に思い出した。ゴツゴツと苛立ちからか大きな足音で立ち去ろうとするゾロに固まっている場合じゃないと体を奮い立たせて背中に飛びつく勢いで引き留めようとする。ずり、と若干引きずられて、だけど立ち止まってくれたゾロにほっとした。
「……んだよ、離せ。悪かったな、なんでもねェよ」
「それ、その、それ、いつ見つけたの」
「……関係ねェだろ」
機嫌が悪いのか低く呻くように突き放されて、だけどここで引き下がっちゃ一生後悔するからとどうにか口を開く。
「私、一ヶ月前に手紙を書いたの」
「……あ?」
「……一ヶ月前に、書いたの」
だから、一ヶ月も経って、ああ遠回しに振られたんだなと記憶の隅に追いやったせいでその紙の存在を忘れて反応が鈍くなってしまってもしようがないでしょ。そう言外に滲ませた瞬間、ふわりと体が宙に浮いて目をつむる。
「……これ、お前なんだな?」
ゾロの背中に張り付いていたはずなのに、目を開いたら目の前にゾロがいて抱き上げられたのを理解する。これ、と少し皺の入った白い紙を突きつけられてこくりと頷いた。
「おれ宛なんだな?」
「……うん」
「よし」
にっかり。目の前でゾロの顔が喜色満面に花開いて、その滅多に見られない満面の笑みに体温が急上昇する。
「おれも、お前が好きだ。……頼むから、もう遠回しなことはやめろよ。一ヶ月、無駄にしただろうが」
▼▼
手紙をそっとロッカーに忍ばせた。手紙、とも言えないかもしれない。だって一枚の紙にすきとただ一言書いただけ。余白がすごい。だけどあれやこれや思い浮かぶことはあれどいざ文字にしようとすればなんだか嘘くさくなってしまって、最終的にその一言しか書けなかった。宛名も、差出人も書かずに、すき、ただそれだけ。
← →