タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これのサンジくん視点
2021/10/12


 暗く狭い箱の中。艶やかな匂いが充満しているうえに全身に触れる柔らかな感触に意識がぶっ飛びそうになる。見聞色で海軍や他の海賊が来ないか気を張っていたせいで最初は気付かなかったけど、なんだこの天国。息を吸えばレディの匂いが鼻をくすぐるし、固まっていてもレディの体温がしっかり布越しに伝わってくる。嗅覚と触覚がやられたせいで鼻血すら出てこないほど動揺しているのはたぶん気付かれていない。無意識に溶け合いたいという欲望に腕に力がこもってしまったせいか、レディの震える吐息が耳に届いて聴覚までやられた。すぐ下に視線をひょいと下げればレディの表情をうかがえるけど、そんなことをしてしまえばレディとおれがひとつになりそうなほど密着している近さでのレディの顔に視覚までやられてしまう。ほぼほぼ千切れている理性を手繰り寄せて顎を上げ、外の世界に意識を飛ばす。かた、と外で音がして視線を無理矢理そっちに移動した。害のない小動物の気配。きっとネズミか何か。海軍や他の海賊はとうにどこかに散り散りになっていて気配は一切ない。だけど自らこの天国を手放す勇気が出なくて、このままレディとひとつに溶け合ってしまいたくて、レディにもう安全だよと安心させるために笑いかけることすらできない。こんなことを考えてるなんて知らないレディはきっと追われていると思い続けて緊張に怯えて不安だろうに、それでもこの時間を手放したくなくて、小動物の気配を敵の気配かもしれないと無理矢理納得させて抱きしめる力を強くした。何も知らないレディはおれに全てを預けるようにとすんと胸元に頭を預けてくれる。今レディが一番危険視しなきゃいけないのはおれなのに。