タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/14


「ゼフさん!」
「あ?」

 可愛い可愛いレディが決意新たにとでもいうような目の輝きでジジイに声を掛けて目をみはる。えっ、なんでジジイのこと名前で呼んでんの? どういう関係なの? いやどういう関係もなにも今日初めて会ったよね? グランドラインを一周して、ルフィは海賊王になったし、クソ剣士はクソ大剣豪になったし、ナミさんだって世界地図を全て書き切ることができたし、ということは、おれだって、全ての海を見たということで。今日はその報告にここに寄っただけだった。おれたちが目指していたオールブルーは確かにあったんだと、ジジイを泣かせてやろうと思って。
 それなのに、そうか、だなんて特になんの感慨もない声音で頷かれただけで、オイコラクソジジイとうとう耳が耄碌したかと久々の大喧嘩をかまそうとしていたところだった。
 一歩踏み出しジジイの目の前に立ったレディの横顔がまっすぐ爛々と輝いていた。

「サンジくんと結婚しても良いですか!」
「エッ」「ァア?」

 耳が耄碌してたのはおれの方かもしれない。レディの言葉を聞き逃すはずがないのに、レディの言葉の意味がわからなくて素っ頓狂な声が出る。目の前でまっすぐに言葉を放たれたジジイも聞いたことのない素っ頓狂な声を上げた気がする。ジジイの声の変化なんてどうでもいいからいつもと同じ声音だったかもしれないが。

「……どうしておれに言う」
「サンジくんの家族に許可をもらいたくて」
「……付き合ってんのか」
「付き合ってないです」
「ア?」
「サンジくん告白しても全然信じてくれないので……。ご家族に許可もらえたら信じてもらえるかなって。指輪も準備してるんですよ、ほら。でも二年前の指輪だからサイズ変わっちゃったかも……」
「おいチビナス固まってねェで目ェ覚ませ」

 ほら、と言いながら、レディがつけていたネックレスを胸元から取り出してそのチェーンの先にふたつの指輪に呆気に取られていたおかげでジジイが振り上げた足に気付くことが出来なかった。云年振りのジジイの蹴りが綺麗に腹に入って踏ん張ることもできず完全に力の抜けていた体は見事に吹っ飛び、バラティエの甲板をゆうに飛んで冷たい海の中。サンジくん?!と驚いたレディが叫ぶ声が海に落ちる寸前に聞こえて、ぽこぽこと沈んでいく。揺れる海面に心配そうなレディの顔がちらちら覗いて、どこからがおれに都合の良い妄想で、どこからが現実なのか訳がわからなくて呻く。
 でもジジイに蹴られた腹が、確かに痛い。