タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/16


 ぺちゃくちゃとうるさく囀るゴースト女にうるせェと言ってしまえばそれ以上にうるさくなるのは目に見えているのに黙り込めなかった。ツッコミを入れてしまえばピーチクパーチクうるさい口が更にうるさくなるのはわかっていたのに堪えきれなかった。そんな堪え性のないおれを見て、ふん、と偉そうな息を吐いて鷹の目が優雅にカップを傾ける姿が視界の端に映って苛立ちにこめかみがぴくりと動いた。それすらも鼻で笑われた気がしてもう口は開かねェと決めて目の前の食事に意識を飛ばす。ひたすら口の中に詰め込んで噛み砕いて嚥下して黙々と皿を空にしていく。あんなにも騒がしい宴でうるさいと腹が立ったことはないのに、大人数で騒がしいアレよりひとりだけが騒がしい今の方が耳につく気がするのは、アレが我が家で、ここが他所の家だからだろうか。ホームシックにも似た感覚に眉間に皺が寄る。こんな小せェガキみたいな感傷に浸ってる情けない思考回路にため息をついた。

「本当にお前、無愛想すぎてまっっったくカワイくねェな!」

 何も返さなくなったおれに最後に投げつけられた言葉を不思議に思って顔をあげる。鷹の目はいつの間にか消えていたし、一方的に言うだけ言って満足したのか飽きたのかふよふよと飛んで行った後ろ姿を見ながら口の中に詰め込んだ最後の一口を飲み込んだ。
 かわいくねェな。首を傾げる。
 首を傾げてしまったことに鳥肌が立った。
 そうだ。普通おれはかわいくねェ。誰が見てもかわいくねェ。なのにその言葉を聞いた瞬間、不思議に思ってしまった事実に鳥肌が止まらない。不思議に思ってしまった表情を誰にも見られなくて心底ホッとした。ホッとしたけど眉間の皺は跡になりそうなほど増える。
 原因はわかってる。むくつけき男代表のようなおれ相手に当たり前の常識を覆すほど可愛い可愛いと洗脳した仲間の女を思い出して苦虫を噛み潰したような表情になった。いつからだっただろうか。いつからか急におれが何をしても可愛い可愛いと宣うようになった。最初はギョッとしていたナミやロビンも、聞くたびに涙が出るほど大笑いしていた男どもも誰も何も突っ込まなくなるほど、何をしてもしていなくても可愛い可愛いと何度も何度も何度も何度も。怒ろうが呆れようが可愛くはないとただの事実を諭そうがそれすらも、可愛いなあゾロは、と笑われてしまえばもうどうすることもできなかった。もう知らねェとその言葉を聞き流していたはずなのに、自然と染み付いてしまっていたそれはもはや呪いで頭を抱えてため息をついた。

「……くそ、あいつ……覚えてろよ」

 二年、二年ある。倒すべき相手に教えを乞うたおれに二度とその口が訳のわからないことを呟けないようにしてやる。そう意気込んだ瞬間、今は散り散りになっておれのようにどこかで修行をしているんだろう女が頭の中でまた可愛いと呟いた気がして頭を振った。

「おれはかわいくねェ」