タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/17


 ぐねんぐねんに頭を上下に動かしながらもたもたと頼りない足取りで入ってきた人に目を見開く。いつもピシッと決めに決めている紳士が、寝癖だらけの金色の髪に、引っ掛けているだけの状態なのかいつもより少し腰の位置が低い黒い足、そして白いシャツの前で動かしている手はいつもテキパキしている姿からはとても想像ができないほど覚束なく一生懸命ボタンをとめているもののすでに1段目から掛け違えていて意味がない。おはようの言葉も紡げないほどぽかんと空いたままの口をしている間抜け面の私に、必死でボタンをとめながらもたもたと歩くサンジくんは気付く気配がない。もし前を向いていたとしても気付いてくれなかったかもしれない。だってまだ眠気に逆らうことができないのかかっくんかっくんと頭が揺れ動いているし、目だって開いていない。驚きすぎて開きっぱなしだった口と目がようやくいつも通りに動いて、そして頬が緩んだ。

「かわいい」

 漏れ出た声にビクッと肩を揺らしたサンジくんがようやく目を開いて私の方を見て目が合う。さっきの私のようにまるまると見開いた目にくすくす笑みがこぼれてしまう。この船に乗せてもらえてよかった。だって、こんな無防備なサンジくんを見ることができたから。

「寝ぼけてるの?」
「えっいつから」

 いつから見てたの、と白い肌を僅かに染めて恥ずかしそうにするサンジくんに立ち上がって近寄る。えっえっと混乱に声を漏らしながらも逃げたりはせずじっと私を見つめながら固まる姿に手を伸ばした。もたもたと覚束無い手からボタンを奪って一度外す。えっ、と一際高い声をあげて戸惑うサンジくんの声が頭上から降ってくるのを無視して、掛け違えていたボタンを全て外して、そして順番にボタンを止めていつものピシッと決めたサンジくんの姿に近付けていく。

「早起きすると良いことがあるって本当なんだね」

 私の言葉をきちんと脳で理解できているかわからない混乱しきったサンジくんを見上げて、今度こそおはようの挨拶を紡いだ。